タワマンでのんびり暮らすはずだった60代夫婦に…
「老後は、夫婦で気兼ねなく映画や美術館に行ける生活がしたかったんです」
そう話すのは、都内のタワーマンションに暮らす65歳の沢田聡さん(仮名)。妻の昌子さん(63歳)と共に、定年退職後は趣味を楽しみながら、静かに暮らしていくつもりだったといいます。
「もともとこのマンションは定年前にローンを完済していて、子どもたちも独立済み。年金は夫婦合わせて月28万円程度。多少の貯金もあるし、老後は“ややゆとりのある暮らし”になると思っていました」
しかし、そんな思いとは裏腹に、退職から2年後、予想外の事態が沢田家を襲います。
きっかけは、マンション管理組合からの一通の通知でした。
「来年度から管理費および修繕積立金を月額合計3万円→5万8,000円に引き上げます」
高層マンションは、エレベーターや共用設備の維持に高額な費用がかかります。加えて、築20年を迎える同マンションでは、大規模な修繕や設備更新が必要になっており、その費用が住民に転嫁されたのです。
「もちろん必要なことは理解しています。でも、月の固定支出が一気に2万円以上増えるのは、年金暮らしには正直きついです」
追い打ちをかけたのが、昌子さんの関節の病気による通院とリハビリの開始でした。通院頻度の増加やリハビリ費用が月に1〜2万円かかり、さらに将来的に介護が必要になるかもしれないという不安も出てきます。
「医療費は3割負担とはいえ、継続的にかかるとボディブローのように効いてきます。自分たちはまだ若いつもりでいたのに、もう“老い”が目の前にあるんだなと実感しました」
老後は“医療・介護のリスク”が高まる時期でもあります。要介護になれば、在宅介護でもヘルパーや福祉用具などに数万円がかかり、施設入所となれば月10万〜20万円以上が必要になるケースもあります。