(※写真はイメージです/PIXTA)

「老後は、自然豊かな場所でのんびり過ごしたい」——そう考える人は少なくありません。都会の喧騒から離れ、庭付き一軒家で土いじりや家庭菜園を楽しむ生活に憧れ、移住を決断するケースも見られます。しかし、理想と現実のギャップは、時に想像を超えるものになることも。年金暮らしとなったある夫婦が選んだ「郊外での第二の人生」は、半年後、思わぬ形で家族に波紋を呼ぶことになります。

高齢者が住まいや地域の環境について「重視していること」

内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果』によると、高齢者が住まいや地域の環境について最も重視しているのは、「医療や介護サービスなどが受けやすいこと」(61.4%)。

 

次いで、「駅や商店街が近く、移動や買い物が便利にできること」(54.1%)、「手すりが取り付けてある、床の段差が取り除かれているなど、高齢者向けに設計されていること」(41.4%)、「近隣の道路が安全で、歩きやすく整備されていること」(33.3%)、「災害や犯罪から身を守るための設備・装置が備わっていること」(32.7%)が続きます。

 

移住後の暮らしが理想通りにいくとは限らず、「医療・生活の利便性・地域との関係性」といった現実的な条件が整っていない場合、結果的に後悔や生活の不安につながる可能性もあるのです。

 

その日の夜、菜穂子さんは両親にこう伝えました。

 

「もう少し便利なところに引っ越すことも、選択肢として考えてみてほしい」

 

最初は抵抗を見せた正志さんでしたが、「せっかくの老後、笑って過ごさなきゃな」とつぶやいたといいます。

 

今では、便利な市街地への住み替えを視野に、地元の不動産会社と相談を始めているとのことです。

 

田舎暮らしや郊外移住は、確かに魅力的です。しかし、「自然が豊か」「家が広い」だけでは成り立たないのも事実。年金・退職金という限られた資金の中で、どこまで快適な生活が送れるのか——。

 

老後の住まい選びには、“夢”だけでなく、“冷静な設計”も必要とされます。

 

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