50代の義弥さんは、母親の相続を見据えて相談に訪れました。父はすでに20年前に他界し、88歳の母は自宅での生活が難しくなり、現在は老人ホームに入所中です。義弥さん夫婦には子どもがおらず、きょうだいもいないため、もし義弥さんが母親より先に亡くなった場合、母親の財産が妻ではなく叔母2人に渡ってしまうことを強く不安視していました。妻に安心して財産を残すためにはどうすればよいのでしょうか? 相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が解説します。
義弥さんの死
残念なことに、義弥さんは母親よりも先に亡くなりました。相談に来られていたころの義弥さんはとてもお元気で、遺言書だけでなく、母親と自分の財産の節税対策もしたいということでしたので、贈与や不動産対策をアドバイスしていました。
私のところで遺言書を作られる方の多くはお元気ですので、実際に遺言書を使うのは10年先、15年先というのが現実です。義弥さん親子もそうなるだろうと思っていました。
一般的には遺言書を作ってからも長いのです。ですので、義弥さんの奥さんより「義弥さんが亡くなった」と聞いたときには、本当に驚きました。奥さんは義弥さんが遺した遺言書を前に涙が止まらなかったとのことでした。
義弥さんは「もし自分にもしものことがあったら、(私のところへ)相談に行くように」と奥さんに伝えていたと言います。
義弥さんの準備は見事だった
義弥さんは母親に遺言書を作ってもらい、自分が先に亡くなったときに妻が困らないようにしました。次に、自分も遺言書を作り、義弥さんが母親より先に亡くなった場合、高齢の母親に財産を渡すよりも、妻に相続させたいとして「配偶者が全財産を相続する」という公正証書遺言を作成しておかれましたので、万全。妻は不安なく、これからの生活をしていけることになります。
50代の義弥さんがまさか、母親よりも先に亡くなるなんて想像もしていなかったのですが、現実にはこうしたこともあるということです。不安に思ったことを相談に来られて、解消するための遺言書を作っておかれた義弥さんの準備は見事だったと言えます。
まとめ
夫が妻のために遺した遺言書は、単なる財産分配の手段ではなく、妻への「最後のメッセージ」でした。悲しみの中でも、妻が安心して暮らすことができるのは、夫が生前に妻への配慮を忘れず、想いを形にしたからです。
義弥さんの意思を生かした遺言書作りのサポートができたことは幸いでした。
皆さんも、まだ遺言書を準備していない場合は、早めに検討してください。法律や税金の知識だけでなく、家族への想いを込めることが、安心できる相続の第一歩です。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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