実家300坪・貸宅地・借入3,100万円
土地は大きな財産。特に日本人は土地さえあれば値上がりする財産と思ってきました。だからこそ、土地を相続したら“資産家”になれると思われています。土地がない人にとっては親から相続できるなんて羨ましい限り。
しかし、実際には、空き家リスク・貸宅地の管理・相続税の借入返済など、「負動産」に悩む方が急増しているのです。
今回は、実家300坪と16筆の土地を相続した永田さん(40代・男性)の事例をご紹介します。永田さんには地主相続の典型課題があり、そこから当方が導き出した「活かす相続」の解決策をお伝えします。
母の死と突然の相続
永田さんの母親が亡くなったのは昨年のことでした。まだ60代という若さでの他界。父親はすでに10年前に他界しており、母親はそのときに全財産を相続していました。
母親は一人暮らしで、都内の実家を守りながら、貸宅地の地代を集金し、駐車場なども管理してきました。所有する土地は実に20筆以上。固定資産税や借入返済も抱えながら、地主としての役割を果たしてきたのです。
しかし母親が亡くなったことで、財産はすべて長男である永田さんに相続されました。永田さん自身は会社勤めで、別の場所に住んでいます。相続によって「実家300坪」と「16か所の貸宅地」を引き継いだのです。
実家300坪の現実
母親の死後、誰も住まなくなった実家は、広すぎる敷地がそのまま負担となってのしかかってきました。
・建物は老朽化し、リフォームや建て替えには多額の費用がかかる
・空き家になったことで防犯上も心配
・草木はすぐに伸び、近隣から苦情が寄せられる
・空き家なのに固定資産税は多額
300坪という広さは一見恵まれているように見えますが、実際には「管理できない空地」になってしまったのです。
貸宅地の悩ましい管理
もう一つの悩みが貸宅地でした。
祖父の代から、祖母、父親の順に、借地人に貸してきた土地は、毎月の地代収入がある一方で、トラブルの種でもありました。
・地代の集金が手間 いまだに集金に行かないと払わない借地人
・借地人から「高い」と不満が寄せられる
・契約書が古く、更新条件が曖昧
・時には支払い遅延も発生
永田さんはサラリーマンとして仕事をしながら、こうした地主業務を一人で担うことに不安を覚えました。妻も手伝ってはくれますが、子育てに手いっぱいの妻に負担を掛けたくないという思いがあります。
「土地があるのはありがたいが、このままでいいのだろうか?」
そう考えて、永田さんは夫婦で相談に来られたのです。
借入金という重荷
さらに相続財産には、父親の代から続く借入金3,100万円が残っていました。過去の相続税支払いのために借り入れたもので、利息を払い続けなければなりません。
「土地はあるのにお金がない」――典型的な地主相続の悩みです。永田さんも一度は母親に対して「ひどいじゃないか!」と憤ったものの、「何とか借入を整理して、安心して生活できるようにしたい」と願っていました。
