45年残された義実家の名義
今回は、70代の吉沢里美さん(仮名)の事例をもとに、「長年使えなかった共有財産を整理し、換金するまでの流れ」をお伝えします。里美さんは、長年連れ添ったご主人を数年前に亡くされ、ご自身の生活や将来に備えるために、夫の実家の共有名義問題を解決したいと私のもとに相談に来られました。
がんで闘病されていた夫が亡くなり、相続手続きをしないといけないのですが、それには夫の実家の共有問題がありました。
里美さんの夫は、亡くなるまで実家の名義を45年間ずっと残していました。ご自身や里美さんが住む予定はなく、使用も管理もできなかった実家の名義。しかし、なぜそこまで名義を残していたのでしょうか。それは、ご主人の家族への思いと配慮の表れでした。
• 家族との絆を守るため
夫は、独身の姉や兄弟との関係を大切にしていました。安易に名義を手放すことで将来争いが起きることを避けたかったのです。
• 里美さんへの配慮
病床にあったご主人は、「姉に買い取ってもらう」という方向で調整し、万が一自分が先に亡くなっても、里美が円滑に権利を行使できるように考えていました。
• 使わないものでも大切に扱う姿勢
実際には45年間、住むことも管理することもできませんでしたが、将来の選択肢を守るために権利として保持していたのです。
こうした思いを尊重しつつ、里美さんは「権利を活かして生活や将来に役立てたい」と考え、私のもとに相談に来られました。
家族構成と財産の状況
里美さんの夫は5人兄弟の末っ子で、亡くなった母親の財産も整理しきれていませんでした。今回の課題は、夫の実家の共有名義です。
夫(故人):持ち分1/4の名義
里美さん:相続予定者、実家には住む予定なし
結果として、実家は里美さんの夫と姉との共有状態。昭和55年から45年間、夫の持ち分は実質的に使えず、権利だけが残されていました。里美さんとしては、この持ち分を換金して生活や将来に役立てたいという思いがありました。
現状の整理と課題
里美さんの夫が持つ自宅の持ち分は1/4、姉の持ち分は3/4。この状態では、里美さんの権利を現実的に活かすことができません。また、共有部分を売却・換金するためには、姉の協力が不可欠です。無理に進めると家族関係が悪化する恐れもありました。
里美さんは「感情的な争いは避けたい」と強く思っていて、まずは現状の権利確認を優先することになりました。
サポート方針
私たちは、次の3つのステップでサポートしました。
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登記簿・権利書の確認
o 自宅の登記情報を精査し、夫の持ち分1/4が正確に存在していることを確認
o 過去の増与や名義移転が適正に行われているか整理 -
共有者との調整
o 姉との関係を尊重しつつ、換金や権利行使の可能性を話し合い
o 法的主張だけでなく、納得のいく形で進める -
換金方法の検討
o 共有持ち分の換金は、第三者への売却や共有持ち分買取など
o 市場価値や手続きコストを見極め、里美さんにとって最適な方法を提案
この時点で、里美さんは「自分の持ち分を無駄にせず、姉とも関係を壊さずに進められる」と安堵されました。
