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契約書と収入印紙の基本ルール
契約書には収入印紙を貼付する義務があり、金額が大きくなればその負担も軽視できません。しかも契約書は当事者双方が同額の収入印紙を貼る必要があります。さらに一定金額以上の領収書にも印紙が必要です。
例外として、医師・弁護士・税理士などの国家資格者が作成する文書は非課税とされていますが、その理由は一般には分かりにくいところです。
課税対象となる文書の範囲
請書・覚書・念書といった、一方当事者が署名して相手に交付する文書も、契約の成立を証明する性質を持つ以上、印紙税の課税対象となります。
最近の税務調査では、法人税や所得税だけでなく、この収入印紙の貼付状況も厳しくチェックされ、未貼付が見つかれば不足分に加えて「過怠税」というペナルティまで課されます。
アメリカでは存在しない制度
筆者はアメリカ出張が多いのですが、この印紙税制度はアメリカには存在せず、取引先に説明するのに苦労することがあります。
実際、最近の調査で摘発されたIT関連企業も、印紙税への理解不足が原因でした。この企業は「アメリカとは契約書を交わしていない」と弁明しましたが、調査官が現物確認を行ったところ、業務委託契約書が多数見つかりました。
契約締結地で課税が決まる
問題となった契約書は第2号文書(請負契約書)に該当し、英文で作成されていたにもかかわらず印紙が貼られていませんでした。
事情を確認すると、アメリカで署名した契約書がEMSで日本に送られ、日本で署名押印していたことが判明。結果的に「日本国内で作成された契約書」とみなされ、多額の過怠税を課されたのです。
本来、契約書が日本国外で作成されれば印紙税の対象にはなりません。署名・押印をアメリカで完結させていれば課税は免れたはずです。
たとえば、大谷翔平選手をはじめ米国で活動するプロスポーツ選手が日本企業とCM契約を結ぶ場合、契約の締結はすべてアメリカで行われています。
歴史に残る「収入印紙税」
アメリカにもかつて収入印紙税が存在しました。まだ独立前の時代、イギリスとの取引契約ではアメリカ側に印紙貼付義務を課す一方、イギリス側は免除されるという不公平な制度が導入されました。この不平等が不満を呼び、やがて「紅茶法」と並んで独立戦争の火種となったことは、日本ではあまり知られていません。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾
