「たしかに狭い。でも、不便ではない」
現在の住まいは、トイレ・風呂別、収納付きの20㎡ワンルーム。築年数は古く、オートロックもありませんが、駅まで徒歩8分、病院とスーパーも近い好立地です。
「たしかに狭いですよ。でも、洋服や家具も最小限にしていけば、意外となんとかなるものです」
「地方の広い一軒家で寒さや虫に悩まされるより、私は“狭いけれど便利な場所”を選びました。電車1本で行ける範囲に、病院も友人もそろっている。年を取ると、距離より“時間と体力の節約”のほうが大事になります」
この考え方は、高齢者福祉の現場でも指摘されています。
年金だけで都心に住み続けるには、「無理がある」と感じる人も多いかもしれません。しかし、律子さんは言います。
“老後は地方で静かに”っていうのも理想だけど、私は“都会の中で目立たず生きる”ほうが向いている気がします。誰も私のことなんて気にしない。それが気楽なんです
将来についても、「このまま今の部屋で暮らし続けるつもり」と話しています。
「介護については、正直まだ考えたくない。でも、このあたりには在宅支援のNPOもあるし、行政の高齢者相談窓口とも少しずつ繋がっておこうと思っています」
「年金18万円・貯金ゼロ」という条件でも、都市の支援制度・人との緩やかなつながり・暮らしの工夫を重ねることで、安心して暮らしていく道はあります。
もちろん、誰にでも都心暮らしが合うとは限りません。しかし、「老後は郊外に引っ越すべき」「年金だけでは暮らせない」といった固定観念にとらわれず、自分に合った“老後のかたち”を選ぶことが、これからの時代には求められているのかもしれません。
