「地方に出ても、知り合いがいない。それなら…」
田村律子さん(仮名・75歳)は、東京23区内にある築30年超のワンルームマンションで一人暮らしをしています。間取りは20㎡ほど、家賃は管理費込みで月7万9千円。
「地方に移れば、家賃3万台の物件もあると聞きました。でもいまさら、見知らぬ土地で一人暮らしする自信はありませんでした」
「東京には“古い友人”が何人かいるし、行きつけの病院やスーパー、図書館もある。それだけで安心感があります」
「東京は住みにくい」と言われる中で、律子さんは“知っている場所にいること”がいちばんの安心材料だったと話します。
律子さんは、事務職として約30年勤務。独身のまま退職後、派遣やパートなどをしながら暮らしてきました。
「正社員の頃の給料もそこまで高くなく、実家に仕送りしていた時期もありました。年金がもらえるようになるまでは貯金を崩して生活していたので、気づいたら、ほとんど残っていませんでした」
現在は厚生年金と国民年金を合わせて月18万2千円。平均よりやや高めではあるものの、「貯金ゼロ・持ち家なし」という条件での都心生活には、緊張感もあるといいます。
律子さんの生活費は月17万円ほど。家賃・光熱費・食費を切り詰めつつも、無理な節約はしていません。
「本当にありがたかったのは、“高齢者向け家賃補助”や“水道基本料金の減免”があったこと。東京都って、制度さえ知っていれば助かることがたくさんあるんですよね」
東京23区をはじめとする都市部では、以下のような高齢者向け支援制度があります。
- 住民税非課税世帯向けの家賃助成制度(例:上限1万円程度/月)
- 高齢者を対象とした住宅確保要配慮者制度(セーフティネット住宅)
- 水道・ガス・交通費の割引制度
- 高齢者福祉センター・見守りサポートなどの生活支援
特に一人暮らし高齢者にとっては、こうした「地域密着型のセーフティネット」が都市部に集積していることが、生活の安定に直結します。
