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入居者の死亡は「法人契約」の終了理由にならない
まず、以下に論点を整理していきます。ポイントは下記5点。
2.借主Aの「契約は無効」との主張の妥当性
3.滞納家賃・延滞料・原状回復費用の回収手段(通知・訴訟・強制執行)
4.契約の個数
5.借主Aとの信頼関係の破壊の有無
まず、102号室については、入居者が死亡したあとも、法人である借主Aとの賃貸借契約が継続していることが重要です。
前オーナーから引き継いだ賃貸借契約書があるのみで、新しく賃貸借契約書を作成していない場合であっても、新オーナーは、所有権移転登記手続を完了しているでしょうから、借主Aの承諾なく、賃貸人としての権利義務を承継します。
そのため、借主Aの「契約は無効」との主張は、前オーナーとの間の契約関係や支払履歴、生活保護受給者による利用実態、音声データなどの証拠によって反論可能です。
借主Aが滞納家賃・延滞料・原状回復費用を支払わない場合は、まず配達証明付きの内容証明郵便を送付し、支払いを求めるべきです。応答がない場合に備えて、簡易裁判所を利用した支払督促や訴訟を検討し、強制執行により回収を図ることが可能か検討することとなるでしょう。
原状回復費用は、退去後に見積もりを取得し、敷金で賄えない分を追加請求する流れになります。法人契約である以上、借主Aの資産に対して法的手段を講じることができ、オーナーとしては冷静かつ着実に対応することが求められます。
次に、202号室の賃貸借契約を年内に合意解除するには、まず借主Aとの契約関係を明確に整理し、交渉の土台を整えることが重要です。
原則として、102号室と202号室がそれぞれ独立した契約(部屋ごとに別個の賃貸借契約)である場合は、202号室について、家賃滞納等の債務不履行がなければ、一方的に契約を解除することはできません。
そのため、まずは書面で解除の申し入れを行い、借主Aが応答しない場合や、過去のように契約の無効を主張するなど誠実な対応が見込めない場合には、借主Aの契約違反(例:無断転貸、賃料の支払遅延など)や交渉態度、支払能力の欠如等を根拠に、信頼関係の破壊が認められるかを検討する必要があります。その際は、契約書の解除条項等を踏まえ、解除通知を送付したうえで、必要に応じて訴訟を視野に入れましょう。
交渉過程での音声データや書面のやり取りは、後の法的手続において有力な証拠となります。年内の解除を目指すには、早期に専門家の助言を得ながら、書面による交渉と証拠の確保を並行して進めることが肝要です。

