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“長年のお得意様”を失った経緯
何年も通ってくださっていた、あるお客様の話です。私が担当するお客様ではありませんが、長年同じお店に来てくださり、頻度も高くご来店されていたので、担当者だけではなく色々なスタッフがご挨拶をしたり、お話をしたり、対応していました。お客様もまた、スタッフの顔や名前をよく覚えてくださっていました。
冗談っぽい感じもありましたが、「〇〇はこういうところがよくない」とか「〇〇はもっとこうしないと」「〇〇は頭が悪いから」と、一緒に働くスタッフの悪い部分をおっしゃることも多く、私はこちらに至らない部分があったのだからお話を聞かなければと、「そうですよね。そのようなお気持ちにもなりますよね。行き届いておらず、申し訳ありません」と答えていました。
気づけば、毎回お会いするたびにそのようなお話をするのが、いつものスタイルになっていました。
私が異動してからも、異動先の店舗にご来店され、以前の店舗での体験やスタッフの悪い話を聞くことが何度か続きました。お客様に悪気があったわけではないと思いますし、ちょっとした雑談ネタくらいに思っていたのだと思います。
ただ私は、それを聞き続けることが大きな精神的苦痛になっていました。
一緒に働いてきた仲間を業務とは関係なく、人として否定されているかのような言葉を聞きながらも、「ご購入くださっているから」「お客様だから」という理由で言い返せない自分に、釈然としない気持ちが残っていました。
そのような接客が続いたある日、自分の中でもう限界だ、と思いました。2時間ほどの接客を終えて、マネージャーに話しに行きました。これからお客様に電話をして、これまでの自分の気持ちをお伝えしたい。今後もスタッフに対して否定的な言葉をお話されるのであれば、私はこれ以上〇〇様の対応はできませんと伝えたい、と。
今思えば、お客様にとんでもないことを言おうとしているとも思います。でも、その時のマネージャーは「もしもお客様がお怒りになって電話を代われとおっしゃることがあれば、私が対応するから言ってね」と言ってくれました。
あの時、私の意見を尊重して背中を押してくれたマネージャーがいたことは、本当に幸せだったと今でも感じています。
震える声で自分の思いをお伝えすると、お客様は電話の向こう側でとても驚いていましたが、「そんな苦しい思いをさせていたなんて気づかなかった、ごめんね」と、理解してくださいました。
しかし、その後再びお会いすることはありませんでした。
