(※写真はイメージです/PIXTA)

2002年から20年間、毎月コツコツと世界中のインデックスファンドを積み立て続けた水瀬ケンイチ氏。2021年末には運用資産が1億円を突破し、いわゆる「億り人」に。複雑な分析や個別株の売買を避け、手間をかけずに資産形成を続けられた理由とは? 水瀬氏の書籍『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』(Gakken)より、現代の個人投資家が学ぶべき「シンプルで着実な資産形成の方法」を紹介します。

日本のインデックス投資の進化

25年前、私がインデックス投資を始めたころは、日本ではきわめてマイナーな投資法だった。本も情報もあまりなく、適切な商品も少なかった。当時は「インデックス投資」と言うと「何それ?」という反応がほとんどで、投資といえば個別株の売買か、せいぜい株式投資信託(アクティブファンド)が一般的だった。


それがいまでは、NISA制度の拡充もあり、インデックス投資が個人投資家の間で主流となりつつある。投資セミナーや書籍、ネット上の情報も豊富になり、初心者でも始めやすい環境が整ってきた。特に若い世代を中心に、「自分の将来は自分で準備する」という意識が広がり、インデックス投資が資産形成の中心的な方法として認知されるようになってきている。


たくさんの低コストインデックスファンドが登場し、投資の敷居は大きく下がった。複雑な分析をしなくても、誰でも世界の経済成長の恩恵を受けられる仕組みが整ってきている。特に新NISAは、将来の金融所得課税強化の可能性を考えると、インデックス投資家にとって大きな追い風だ。


25年前には考えられなかったような政策的支援も受けられるようになってきた。振り返れば、私のインデックス投資の道のりは日本の資産運用環境の進化とともにあったといえる。道のりの始まりは険しかったが、インデックス投資が当たり前になりつつあるいま、かつての苦労が報われたように感じる。


私がインデックス投資を始めたころは、周囲から「珍しい投資方法」だと受け取られることも少なくなかった。個別株トレードの派手な儲け話が飛び交う中で、「市場平均と同じリターンで満足する」という考え方は、当時の日本ではほとんど理解されなかった。しかしいまでは、「投資初心者はまずインデックスファンドから」というのが常識になりつつある。


この変化は、単に投資商品や制度が変わっただけでなく、日本人の金融リテラシーや資産形成に対する意識が向上したことの表れでもある。「貯蓄から投資へ」というスローガンが掲げられて久しいが、ようやくその流れが本格化してきたように思う。金融教育の充実も進んでいる。学校教育の現場でも投資の基礎が教えられるようになり、企業でも確定拠出年金(企業型DC)が導入され、資産形成セミナーを開催するところが増えてきた。これから投資を始める若い世代は、私たちよりもずっと恵まれた環境で資産形成をスタートできる。

 

それでもなお、日本の個人金融資産の半分以上は依然として預貯金で保有されている。インデックス投資の普及はまだ道半ばだ。しかし、少しずつではあっても着実に変化は進んでいる。私が25年前に孤独に始めたインデックス投資が、いまでは多くの人が選ぶ一般的な方法になりつつあることをうれしく感じている。

 

これからインデックス投資を始める人たちに伝えたいのは、「急がなくていい」ということだ。資産形成は長い時間をかけて行うものであり、焦る必要はない。大切なのは、自分のリスク許容度に合った投資計画を立て、それを淡々と続けることだ。25年間積み立てを続けた先に、想像以上の結果が待っているかもしれない。

 

 

水瀬 ケンイチ
個人投資家

 

 

※本連載は水瀬ケンイチ氏の書籍『彼はそれを「賢者の投資術」と言った』(Gakken)を一部抜粋・再編集したものです。

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