ついに現れた夢の商品「オルカン」
投資商品としては、それまでメインで投資していた海外ETFのVTを上回るよい商品がついにあらわれた。それは「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、通称「オルカン」だ。これは、全世界株式に投資できる超・低コストなインデックスファンドである。
私が投資を始めた20年前には、このような商品は日本では考えられなかった。信託報酬(運用コスト)は年率0.1%台と驚くほど低く、世界中の株式市場に1本で投資できるという利便性も備えている。インデックス投資家にとって、まさに理想的な商品だ。
海外ETFのVTは低コストで残高も巨大なよいETFであるものの、日本の証券会社では外国株式扱いの割高な売買手数料がかかる(条件によってはかからない場合もあるが)。なにより、ETFの場合は毎年4回分配金が支払われる。資産形成期の投資家にとっては、分配金が発生することでその時点で課税されるため、資産がやや目減りすることになる。さらに、それを自分で再投資するという手間がかかる。インデックスファンドは分配金を出さないことがほとんどで、分配金見合いのものはファンド内で自動的に再投資されて基準価額の上昇として反映されるのだ。このような税金面での取り扱いの違いは、長期投資では大きな差になる。
オルカンはVTとほぼ同じ全世界の株式に1本で投資可能でありながら、信託報酬は同レベルかわずかに安く、なにより国内籍の投資信託がもつ特徴である、「たった100円」から「金額指定」で買える。もちろん、確定申告の手続きも不要だ。そしてオルカンの運用会社である三菱UFJアセットマネジメントは「eMAXIS Slim」シリーズについて「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」と明言している。実際に、より低コストな競合ファンドが登場したときには運用コストを対抗値下げしてきた実績がある。
私も株式クラスの積立商品はオルカン1本に絞り、毎月積み立てを継続することにした。リレー投資を行う必要もなくなった。商品が改良され、投資環境も整ってきたことで、投資はますますシンプルになり、手間もかからなくなった。
NISA制度の拡充~日本の投資環境の大進化
2024年からは新NISA(少額投資非課税制度)という非課税制度が大幅に拡充された。生涯投資枠が1800万円と大幅に拡大されたことに加え、非課税期間が無期限となった。個人投資家の資産運用を制度面からも強力にサポートしてくれる体制がようやく築かれてきた。もちろん、オルカンも非課税対象商品だ。
このNISA制度の拡充は、長期投資家にとって画期的なものだ。いままでの制度では、非課税期間が限られていたり、投資可能額が小さかったりと制約が多かった。それが、生涯にわたって1,800万円もの資金を非課税で運用できるようになったのは、大きな前進と言える。
25年前には想像もできなかったような投資環境の改善を目の当たりにして、日本の資産形成文化も少しずつ変わってきているのを感じる。銀行預金一辺倒だった個人の金融資産も、少しずつ投資へとシフトしつつある。この流れが続けば、将来的には「当たり前の資産形成手段」としてインデックス投資が認知されるようになるだろう。
