前回は、ウレタン樹脂による床の修正工法での近隣住民への影響等について見てみました。今回は、ミリ単位の修正を実現するという、この工法の施工手順についてお伝えします。

床面の高さとウレタン樹脂の膨張変化を正確に読み取る

実際の施工は、作業に入るまでにできるだけ下準備をすませておきます。建物の管理者に図面の有無を問い合わせ、できるだけ詳細な建物図面を確認。次いで、実際に現場を見に行き、状況を調査します。

 

測定器を使って、実際に床が下がっているかどうか、下がっているとすればどこがどれくらい下がっているのかをチェック。こうした調査に基づき、また、お客様の業務、建物の使用状況とも合わせて、投下する機械台数と作業チームの体制を決め、どの部分から施工に入るか手順を組み立てていきます。

 

作業は、床が沈下している、最も低いポイントから始め、順番に上げていくのが基本です。ただし、業務で使用中の建物の床を上げる場合には、仕事への影響が少なくなるよう、荷物を一部分だけ順次移動しながら施工しますから、建物の端の一方向から順番に作業していくこともあります。

技術作業員が、作業時に神経を張る3つのポイント

床が完全な水平を取り戻し、また、操業を止めず、施工が終わった場所はすぐに業務が行えるようにするために、作業時、技術作業員が最も神経を使うのは以下の3つです。

 

ひとつは、削孔の際、土間コンクリート下の埋設物を傷つけないこと。排水管や電気系統の配線などがどのように通っているか、細心の注意を払います。

 

同じく重要なのは、ウレタン樹脂の膨張・発泡による床の高さの変化量です。今入れた樹脂がどれだけ膨張・発泡するのか。技術作業員の隣には縦方向を計測するゲージが置かれ、レーザー測定器の光で床面の高さの変化をリアルタイムで示すようになっていますから、注入ガンのトリガーを引くたびごとに確認し、それによって床の高さはどう変わるのかを読んで次の注入量を判断します。

 

注入量が少な過ぎれば、隙間が生じて再施工の原因をつくりますし、多過ぎると沈下量に対して発泡力が強くなり過ぎ、床を壊すことになりかねません。適正な注入量は技術作業員の経験によってしか決められないのですが、この一連の作業があるからこそ、ミリ単位の床レベル修正も問題なく実現できるのです。

 

3つめは、床上に樹脂を散乱させないように、注入ガンを正しく、基本どおりに操作すること。

 

土間コンクリート下が空隙になっているならともかく、沈下しているとはいえ、床下に土がある場合には、薬液を注入ガンに送るコンプレッサーの圧送力と、さらにはウレタン樹脂の発泡圧力で地面の中に樹脂を浸透させていかなければなりません。注入ガンにはその反力がかかりますから、不用意に扱うと注入の際にノズルと注入孔の隙間から樹脂が周囲に飛散しかねないのです。したがって、その圧力に負けないよう、注入ガンの扱いには充分注意しています。

 

こうして床の高さレベルが目的の値に達したら、その注入孔の作業は終了し、次の注入孔へ移ります。そして、作業が終わった注入孔は、モルタルを使って孔埋めをしていくのですが、ドリルの削り屑など、注入孔付近の汚れはその都度掃除され、つねに清潔が保たれます。

施行前に床レベルを測量
施行前に床レベルを測量
ウレタン樹脂の注入孔を削孔
ウレタン樹脂の注入孔を削孔
ウレタン樹脂を注入
ウレタン樹脂を注入

本連載は、2016年11月25日刊行の書籍『改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9割』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

松藤 展和

幻冬舎メディアコンサルティング

4年前出版し関係者の間で話題沸騰したあの書籍が、「傾いた床」による様々なリスクを追加収録し、 【改訂版】としてパワーアップして帰ってきた! たった0.6度の床の傾きで、業務も傾く! 日本の建物の9割が地盤に起因…

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