前回は、ウレタン樹脂を床下に注入する工法において一般的にかかるコスト、および他の工法との優劣の比較をお伝えしました。今回は、基礎が完全に浮き上がってしまった建物の修正事例をご紹介します。

責任を持って算出した金額は、責任を持って守る

Q見積もりより多くウレタン樹脂が必要になったら、金額が上がりますか?

 

見積もりより多くの材料を使ったとしても、金額は変わりません。

 

通常、見積もりは、面積と沈下のレベルによってざっと概算の金額を出し、より正確なところは、専門のスタッフが実地調査し、沈下の様子(床レベル測量、土間床下空隙量調査など)、床の構造なども詳しく見て金額を算出します。ただし、実際に施工を始めたあと、調査よりも多くのウレタン樹脂が必要になったからと言って、材料量に応じた追加を求めることはしないようにしています。それをしては、調査の甘さを自ら告白するようなものですし、何より、見積もりの意味を成さなくなるためです。責任を持って算出した金額は、責任を持って守らなければなりません。

 

他工法の場合、施工が進むに従って「想定より多かった」「見込みと違った」などで、金額が加算される例もあると聞きます。あとで「こんなはずではなかった」ということにならないように、見積もりの前提をよく確認することをおすすめしておきたいと思います。

床下に大きな空洞が生まれてしまった自動車学校の建物

Qコスト面から見て、この工法が不向きな現場もあるのですか?

 

莫大な量の材料を必要とする現場ですと、不向きかもしれません。

 

前述のように、完全ノンフロンのウレタン樹脂はコンクリートやモルタルに比べれば割高です。また、他にそれを補って余りあるメリットがあることもご説明しました。

 

それらを天秤にかけることになるのでしょうが、床と地面とに空隙ができていた場合、それが深さ10センチ以下であれば材料のコスト高は他のメリットと相殺できると思います。しかし、面積にもよりますが、10センチを超えると、コスト高が気になってきます。

 

もっとも、こんなケースがありました。北海道のとある自動車学校の建物です。

 

もともと北海道の平野部は泥炭・腐植土である地域が多く、強固な建物を建てるには難しい土地です。この自動車教習所もそうで、建てて以来、敷地全体が沈下を起こしていたのだそうです。

 

ところが、深くしっかりと基礎杭を打ち込んでいたために、建物は沈下から取り残されていました。建物の周囲の土地も沈んでいましたから、それにつれて、建物の入り口にはスロープができ、その傾斜がだんだん大きく長くなるという具合。しかし、もっと深刻な問題が、見えないところで進行していました。

 

基礎の土間コンクリート下の地盤もどんどん沈んでしまったために、床下に大きな空隙ができていたのです。空隙というよりは、空洞といったほうがふさわしい大きさでした。

他工法と組み合わせて施工するケースも

地盤沈下と基礎の関係には、いくつかのパターンがあります。

 

まず、建物が建った直後、地盤沈下が起きていない状態では、当然のことながら基礎下に空隙はありません(図①)。しかし、やがて地盤沈下が起きるようになった時、建物がそれほど重くなく、一方で地盤がより軟弱だと、基礎の中央が地盤に接していても、端の部分から空隙が生じるようになります(図②)。

 

それがさらにひどくなっているのが、この自動車教習所のケースで、基礎が完全に浮き上がっている状態でした(図③)。沈下した地盤と基礎の関係では最もタチが悪く、基礎にある程度以上の重さや衝撃が加わると、いつ壊れてもおかしくありません。何が何でも早急に手を打たねばならないレベルにまで事態が進行してしまっていたのです。

 

空隙が大き過ぎるため、ウレタン樹脂を使うのはコスト的に得策ではありませんが、このケースでは、建物の周辺部はコンクリートで空隙を埋め、中央部はウレタン樹脂を注入することになりました。建物自体がいわば地盤から半ば浮いたような状態になっているため、内部まで重いミキサー車などが入るわけにはいかなかったのです。

 

このように、他工法との組み合わせでコストのかけ方を合理的に配分すれば、両工法のメリットが生きるといえるでしょう。

 

■地盤沈下と基礎の関係

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    本連載は、2016年11月25日刊行の書籍『改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9割』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

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    松藤 展和

    幻冬舎メディアコンサルティング

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