前回は、基礎が完全に浮き上がってしまった建物を、ウレタン樹脂を使った工法で修正した事例をご紹介しました。今回は、施工だけでなく、メンテナンスや解体での費用までも含めた「ライフサイクルコスト」という考え方から、この工法のメリットを検討します。
企画から解体までを含めた「ライフサイクルコスト」
修正工事を経た建物の、解体時のことについてご説明しておきます。
ウレタン樹脂は、床という「面」を支える力は強くても、実は、「点」の力に対しては弱いという性質があります。ハンマーなどで叩けば、簡単に砕けるのです。
このため、いざ建物を取り壊す時期が来た時には、小さく砕いたり切ったりして容易に撤去・廃棄することができます。
昨今、建物の価値を考える際、ライフサイクルコスト(LCC)といって、企画・設計・建築時から将来の解体時にかかるトータルの費用でとらえるという考え方が広がってきました。企画・設計費、建築費を投じて建物ができあがったあとには、延々と光熱費、修繕費、保全費がかかりますし、寿命を迎えて解体する時には解体費がかかります。大抵の建物では、最初の企画・設計費、建築費はライフサイクルコスト全体で見れば小さな割合しか占めませんから、残りのコストを合理的に抑えようという考え方です。
ウレタン樹脂での工法は、トータルで見れば低コスト
床の沈下修正費用は修繕費に分類されるのでしょうが、その中でもライフサイクルコストの考え方を適用することができます。修正工事にかかる費用が少なくても、そのあと、繰り返し工事が必要になればライフサイクルコストは膨らみます。その上、解体にも大きなコストがかかるのであれば、なおさらです。
ウレタン樹脂を使用した沈下修正工法は、初期の施工費は最小ではないものの、地盤が再度の沈下をしない限り再施工は不要ですし、解体コストも小さいため、ライフサイクルコストで見れば、最小の工法として位置づけることができます。
アップコン株式会社
代表取締役
1985年 武蔵工業大学(現 東京都市大学)建築学科卒業。
1988年 プラット・インスティテュート大学院(ニューヨーク)インテリアデザイン学科卒業。
1989年 オーストラリア・シドニーの大手建築設計事務所に勤務。日本担当部長として新規事業開拓を手がける。
1998年 設計施工一貫請負の会社をシドニーに設立。
2000年 特殊樹脂を使用する地盤沈下修正工法を知り、工法を習得。
2001年 同工法を用いた外資系土木会社の日本法人を設立。代表として、九州で事業を展開。
2003年 4月 独自に研究を重ね、ノンフロン材を用いた小型機械による新工法「アップコン」を考案開発。6月 アップコン有限会社(現 アップコン株式会社)を設立。代表取締役に就任、現在に至る。
2006年 EOY JAPAN 2006 ファイナリスト
2009年 ASPA Awards 2009 Excellence Prize 受賞
2012年 かながわビジネスオーディション2012 審査委員特別賞受賞、低CO2川崎パイロットブランド'11 受賞
2014年 奨励賞受賞(川崎市制90 周年記念表彰)
「夢の扉 ~NEXT DOOR~」(TBS テレビ)、「FNN スーパーニュース」(フジテレビ)、「ホンマでっか!? TV」(フジテレビ)など各種メディアにも多く取り上げられる。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載沈下問題を抱える工場・倉庫の「トクする修正工法」