前回は、ウレタン樹脂による床の修正工法での、具体的な施工手順についてお伝えをしました。今回は、完全自動式の高機能倉庫において、床にレールが敷かれたまま、工事を行った事例をご紹介します。

一度に数ミリ単位ずつ床を上げていき調整

Q床に自動収納ラックのレールが走っていますが、大丈夫ですか?

 

大丈夫です。

 

薬品メーカーの倉庫で、こんな経験をしました。

 

その倉庫も収納ラックは完全自動式。倉庫の手前側で荷物を移動式トレイに移し替えると、タグとプログラムに従って、自動的に荷物が収納されます。また、それらを取り出す際も同様という、高機能な無人倉庫でした。

 

ところが、不同沈下が起きたことで、その機能に大きな障害が出てきました。

 

傾斜がきつくなったために、ラックの安全装置が作動し、その部分に荷物が行くたびに仕事がストップしてしまうのです。倉庫業務にとっては大ブレーキです。床面には自動収納のためのレールが敷かれているのですが、施工時、これに変な癖を付けてはなりません。床の上げ幅は一度に数ミリ単位で行うという難易度の高い作業になりましたが、それでも当初予定の期間内で施工を終えています。

自動収納ラックが林立し、床にレールが走っている倉庫
自動収納ラックが林立し、床にレールが走っている倉庫

地盤の状況を鑑みて、施工後10年間の保証を付与

おまけに、この倉庫では、施工後10年間の保証期間を設定しました。

 

通常は、再沈下のリスクに対して保証は行っていません。いわば地盤は“生き物”であって、われわれも再沈下が絶対起きないとは言い切れないのです。ところが、この倉庫の場合は綿密なボーリングデータがあり、また、建物ができた直後に沈下が始まり、その後は最近10年にわたって沈下は起きていないという記録もあったため、保証に踏み切りました。

 

地盤に問題がなければ、あとは沈下修正工法の精度のみ。そこに問題が生じる余地はなかったのです。

本連載は、2016年11月25日刊行の書籍『改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9割』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9 割

松藤 展和

幻冬舎メディアコンサルティング

4年前出版し関係者の間で話題沸騰したあの書籍が、「傾いた床」による様々なリスクを追加収録し、 【改訂版】としてパワーアップして帰ってきた! たった0.6度の床の傾きで、業務も傾く! 日本の建物の9割が地盤に起因…

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