前回は、ウレタン樹脂による床の修正工法での、具体的な施工手順についてお伝えをしました。今回は、完全自動式の高機能倉庫において、床にレールが敷かれたまま、工事を行った事例をご紹介します。
一度に数ミリ単位ずつ床を上げていき調整
Q床に自動収納ラックのレールが走っていますが、大丈夫ですか?
大丈夫です。
薬品メーカーの倉庫で、こんな経験をしました。
その倉庫も収納ラックは完全自動式。倉庫の手前側で荷物を移動式トレイに移し替えると、タグとプログラムに従って、自動的に荷物が収納されます。また、それらを取り出す際も同様という、高機能な無人倉庫でした。
ところが、不同沈下が起きたことで、その機能に大きな障害が出てきました。
傾斜がきつくなったために、ラックの安全装置が作動し、その部分に荷物が行くたびに仕事がストップしてしまうのです。倉庫業務にとっては大ブレーキです。床面には自動収納のためのレールが敷かれているのですが、施工時、これに変な癖を付けてはなりません。床の上げ幅は一度に数ミリ単位で行うという難易度の高い作業になりましたが、それでも当初予定の期間内で施工を終えています。
地盤の状況を鑑みて、施工後10年間の保証を付与
おまけに、この倉庫では、施工後10年間の保証期間を設定しました。
通常は、再沈下のリスクに対して保証は行っていません。いわば地盤は“生き物”であって、われわれも再沈下が絶対起きないとは言い切れないのです。ところが、この倉庫の場合は綿密なボーリングデータがあり、また、建物ができた直後に沈下が始まり、その後は最近10年にわたって沈下は起きていないという記録もあったため、保証に踏み切りました。
地盤に問題がなければ、あとは沈下修正工法の精度のみ。そこに問題が生じる余地はなかったのです。
アップコン株式会社
代表取締役
1985年 武蔵工業大学(現 東京都市大学)建築学科卒業。
1988年 プラット・インスティテュート大学院(ニューヨーク)インテリアデザイン学科卒業。
1989年 オーストラリア・シドニーの大手建築設計事務所に勤務。日本担当部長として新規事業開拓を手がける。
1998年 設計施工一貫請負の会社をシドニーに設立。
2000年 特殊樹脂を使用する地盤沈下修正工法を知り、工法を習得。
2001年 同工法を用いた外資系土木会社の日本法人を設立。代表として、九州で事業を展開。
2003年 4月 独自に研究を重ね、ノンフロン材を用いた小型機械による新工法「アップコン」を考案開発。6月 アップコン有限会社(現 アップコン株式会社)を設立。代表取締役に就任、現在に至る。
2006年 EOY JAPAN 2006 ファイナリスト
2009年 ASPA Awards 2009 Excellence Prize 受賞
2012年 かながわビジネスオーディション2012 審査委員特別賞受賞、低CO2川崎パイロットブランド'11 受賞
2014年 奨励賞受賞(川崎市制90 周年記念表彰)
「夢の扉 ~NEXT DOOR~」(TBS テレビ)、「FNN スーパーニュース」(フジテレビ)、「ホンマでっか!? TV」(フジテレビ)など各種メディアにも多く取り上げられる。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載沈下問題を抱える工場・倉庫の「トクする修正工法」