大手企業と中小成長企業、それぞれの文化を知る
自己分析をして自分の長所・短所、仕事への価値観を理解するほか、もう一つ入社後のミスマッチを防ぐ手段として、企業理解が挙げられます。
どんな環境で働くか、ともに働くメンバーや上司がどんな人々かは、仕事の成果や個人の成長に大きな影響を与えます。5年後、10年後に理想の自分になるために、自分の成長を最大化させてくれる会社を選びたいものです。
自分を成長させてくれる企業の定義は、人によって異なります。人の価値観がさまざま
であるように、企業もそれぞれ独自の理念や文化、育成方針を持ちます。両者の相性が合致すれば、個人の成長の可能性は広がります。
学生からの就職相談ではよく、「自分を成長させるためには、大企業と中小成長企業、どちらを選べばいいですか?」と質問を受けます。両者は育成方針が大きく異なるため、それぞれ理解したうえで自分に合うほうを選ぶようアドバイスしています。
大手企業と中小成長企業の育成方針には、大きく次のような特徴があります。
・大手企業
教育カリキュラムが整っています。ビジネスマナーなど、社会人として当然身につけておくべき知識を丁寧に指導します。一定の役職まではレールに乗って出世できるのが大企業の特徴です。学生時代、教科書どおりに学ぶことが得意だった人に向いた育成方法です。
・中小成長企業
大手企業のような体系立ったカリキュラムはないことがほとんどです。マニュアルで学ぶよりも、現場に出てOJT(On the Job Training、上司や先輩社員が実際の業務を通じて後輩に指導する方法)で学びます。先輩や上司の仕事を見て、自分で考え、スキルを身につけていきます。教科書を見て学ぶよりも、自分の感じたことを自ら消化していける人に向いています。このように、大手企業と中小成長企業で育成方針は大きく異なります。
どちらも経験して思うこと
私は、大手企業と中小成長企業をどちらも経験しました。ファミリーレストラン運営会社を1週間で退職したあと、契約社員として入社したコールセンターの運営会社は、大手企業でした。
そこにはしっかりと体系立てられた教育プログラムがあり、分厚いマニュアルに沿ってビジネスマナーや業務知識を学んでいきました。
カリキュラムを学んだあとは、コールセンター運営に必要な一定の要件を満たすために、社内検定試験もあり、学んだ知識が定着しているかを確認する機会として機能していました。
そのあとに転職したのは、同じくコールセンターの運営を行う中小規模の会社でした。その会社は規模が小さく、社員数も少なかったため、1人がいくつもの職種を掛け持ちしていました。
私はコールセンターのセンター長を担当するつもりで入社しましたが、入社当日、営業するように言われました。自分の得意なオペレーション管理で能力を発揮できると思っていたら、それまで経験したことのない営業職を務めることになり、当初は戸惑ったものです。
ベンチャー企業なのでマニュアルもなく、大手企業のような丁寧な指導もありません。
そこで私は会社のサービスを必死に理解し、その後は先輩の営業に同行させてもらって、営業の仕事とは何か、どんなことをすればいいのか、先輩のいいところ・悪いところを直接目で見て考え、学びました。
自分なりの営業の型を作るためにずいぶん試行錯誤しましたが、この中で前職の大手企業でたたき込まれた「ロジックを立て、それに沿って物事を進める」という考え方が大いに役立ちました。ロジカルに営業活動を展開することで、大きな成果につながったのです。
