贈与税は、相続税逃れを防止するためにある
吉田課長「生前に贈与すると、相続時の相続財産はその分だけ減少しますよね」
そのとおりです。生前贈与は、相続税対策の1つとして利用されています。
吉田課長「納税者は、生前贈与のやり方を利用するのですね」
国もこの点を見越して、贈与税の仕組みを規定しています。
吉田課長「たとえば?」
ここでは、基礎控除額の違いを紹介します。
吉田課長「基礎控除額とは?」
相続税、贈与税が課税されない財産の金額のことです。相続または贈与を受けた財産の金額が基礎控除額以下であれば、税金はかかりません。また、一部の例外を除いて申告する必要もありません。
吉田課長「相続税と贈与税の基礎控除額は、いくらになりますか?」
相続税は相続人等全員で計算し、贈与税は受贈者単位で計算されます。単純比較はできませんが、相続人等と受贈者がそれぞれ1人の場合、相続税の基礎控除額は3,600万円、贈与税は110万円となり、3,490万円の差が生じます。
(1) 相続税の基礎控除額(相続人等全員で)
3,000万円+600万円×民法が規定する相続人の数
(2) 贈与税の基礎控除額(受贈者単位で)
110万円
相続税、贈与税の基本をおさえる
吉田課長「相続税の生前対策という言葉はよく聞きますね」
過度の節税手法に対して、政府はこれを封じ込める税制改正を行ってきました。しかし、納税者の立場からは、相続税対策は必要です。相続税を多く納めると、実質的に相続で取得する金額が少なくなるからです。そして、最初に取り組むべきことは、相続税と贈与税の基本的な規定を知ることです。
吉田課長「当然、特例もありますよね」
はい。相続税は、相続財産を金額に換算し、その金額に税率を掛けて求めます。この場合、たとえば同じ土地であっても、自宅の土地と、別荘の土地とでは、前者を評価する場合には、国としても配慮が必要です。後者は、配慮しない本来の金額とします。
そこで、自宅は遺された配偶者が住み続けることが多いため、本来の評価額を減額する相続税の小規模宅地等の減額特例(租税特別措置法69条の4)を設けています。
「売却できない相続財産には、課税に当たって配慮するということですね」
そうです。相続税の特例は、相続開始(死亡)後の納税者の実情に配慮したものが多いことは事実です。ただし本連載では相続税と贈与税の基本規定を知っていただくことに重点を置きます。特例の紹介は実務上、重要なものに留めます。
相続税の支払後の金額が、実質的に相続した金額
吉田課長「改めて、相続税と贈与税を学ぶ意味とは?」
親の財産を子が引き継ぐ方法としては、生前贈与と相続があります。いずれの場合においても税(贈与税、相続税)が関係します。特に、相続は親から子への最終的な財産の移転になるので、重要です。この場合、相続税はマイナスの相続財産を意味します。
相続税の仕組みを知るとともに、事前にあなたの場合の相続税がいくらになるかについて、試算しておくことが重要です。
多田雄司
税理士
