(※写真はイメージです/PIXTA)

親や身近な人から財産を受け継ぐとき、「相続税」という税金に向き合う必要があります。相続税とは、亡くなった人(被相続人)から財産を受け取った相続人に課される税金で、財産の移転に伴う経済的利益に着目して課税されます。生前に贈与を受ける場合には贈与税が関係するなど、財産をどう引き継ぐかによって納税額は大きく変わります。この記事では、顧問先の吉田課長の質問に沿って、相続税と贈与税の基本や制度のポイントを税理士がわかりやすく解説します。

〈登場人物〉

吉田課長:A社で働く課長。3人きょうだい(吉田さん、弟、妹)の長男で、2人の子を持つ。税理士とは業務上のやり取りがある。

そもそも相続税とは?

吉田課長「私的なことなのですが、相続税について質問していいでしょうか?」

 

今年、吉田課長のお父様が80歳になったことを機に、吉田課長は税理士に相談しています。これを機会に、相続税のことを知っておく必要があると感じて、質問しています。

 

吉田課長「そもそも、なぜ、相続税を支払わなければならないのでしょうか?」

 

相続税は、民法で規定される相続人や、遺言で遺贈の指名を受けた受遺者(以下「相続人等」)が、死亡した被相続人から財産を相続または遺贈によって取得したことに伴う経済的価値の移転に着目して、相続人等に課税する税金です。

 

吉田課長「財産は、親から子に受け継がれるものですよね?」

 

民法で規定されています。しかしこの承継行為は、たとえば、個人から独立した「××家の財産」を、親から子に単に名義を変えるというものではありません。言い方を変えれば、夫婦、親子間であっても、人格が別の被相続人から、相続によりお金を払わないで財産の移転を受けたことによる利益、利得に課税するのです。

 

社会政策的には、相続税の課税は相続財産の一部を国に戻すことを意味します。すなわち、相続税の課税は、国民の間の貧富の差の拡大を防止する施策の1つとして位置付けられています。

生前贈与には贈与税を課税。相続税と贈与税の違いは?

吉田課長「贈与税という税もありますよね」

 

贈与税は、お金を支払わないで財産をもらった受贈者が、贈与者から受けた経済的な価値の移転に着目して、その受贈者に課税する税金です。

 

吉田課長「相続税と贈与税の共通点は?」

 

どちらの税も、個人から個人に無償で経済的価値が移転した場合に課税される点で共通しています。

 

吉田課長「相続税と贈与税の違いは?」

 

相続税は、被相続人の死亡により発生し、相続財産を受け取るのは相続人等に限定されます。

 

一方、贈与税は財産の贈与者が生きている間に発生し、受贈者は親族に限らず誰でもなることができます。ただし、実務上は配偶者、子、孫など親族への贈与がほとんどです。

 

次ページ贈与税は、相続税逃れを防止するためにある
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