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課題解決は問いから始まる
コンセプチュアルスキルの全体像は、三重の円です([図表]参照)。
中心は、「問う」スキルです。問いは、なぜ、どうして、これは何、などと考えることです。
これは課題の種になります。また、問いから見えてくる課題は、その解決策を考えることで事業になります。
例えば、最初から「どのように業務改善すればいいか」ということを考えても、適切な答えは導き出せません。最初に考えるべきは「なぜこの業務は時間がかかるのか」や「効率の悪い業務は具体的にどこか」ということです。適切な問いは、結果的に業務フローの見直しや改善といった課題につながります。ITエンジニアは、その課題の解決策をシステムの視点から考えることで事業を作ることができます。
ただし、日常生活で疑問を感じることはいくつもあります。そのすべてが事業になるわけではありません。ビジネスの視点で考えると、問いの価値は玉石混淆(ぎょくせきこんこう)で、社会を変えるくらい大きなインパクトを生み出す可能性を秘めた問いもあれば、誰も注目せず、解決しても誰も喜ばないような問いもあります。そのような濃淡があることを踏まえて、問いを正しく設定することが大事なのです。
アインシュタインは「ある問題の解決に1時間を与えられたら、そのうちの55分は正しい問いを定義することに費やすだろう」と言った、といわれています。実際にはアインシュタイン本人がそう言ったという証拠や文献が何一つ残されていないので、後世の人が勝手に考えた創作かもしれません。
そうであってもこのいかにもな文章は、適切な問いがいかに大切か、ということを端的に示しています。もし問いが間違っていれば、その間違った問いに正しい答えを見つけたとしてもまったく意味のないものになるからです。
アインシュタインのこの言葉は、人とAIの役割の違いを表した言葉と読み取ることもできます。AIは問いに対する答えを出すことが得意ですが、問いそのものを生み出すことはできません。現在では「AIを使うAI」といったものも登場していますが、その「AIを使うAI」に最初の問いを投げかけるのは、やはり人間です。
だからこそ、人は正しい問いを考えることに時間と労力を費やさなければなりません。
AIはすぐに答えを出せるため、60分のうちの5分もあれば十分です。しかし、そもそも問いが間違っていれば、AIが導き出した答えは誰の役にも立たないのです。

