(※画像はイメージです/PIXTA)

ITエンジニアが「事業」を生み出すためには、まず解決すべき課題を発見しなければなりません。課題を見つけ、システムの視点から解決策を考える必要があるのです。とはいえ目の前の課題をただ解決するだけでは不十分で、抜本的な解決策を求める顧客も少なくありません。そこで本稿では、谷誠之氏による著書『Nonテクニカルスキル 生成AI時代にITエンジニアが身につけるべき能力』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部抜粋・再編集し、課題と解決策の発見に役立つ「コンセプチュアルスキル」の重要性について詳しく解説します。

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課題解決は問いから始まる

コンセプチュアルスキルの全体像は、三重の円です([図表]参照)。

 

出所:『Nonテクニカルスキル 生成AI時代にITエンジニアが身につけるべき能力』(幻冬舎メディアコンサルティング)より抜粋
[図表]コンセプチュアルスキルの全体像 出所:『Nonテクニカルスキル 生成AI時代にITエンジニアが身につけるべき能力』(幻冬舎メディアコンサルティング)より抜粋

 

中心は、「問う」スキルです。問いは、なぜ、どうして、これは何、などと考えることです。

 

これは課題の種になります。また、問いから見えてくる課題は、その解決策を考えることで事業になります。

 

例えば、最初から「どのように業務改善すればいいか」ということを考えても、適切な答えは導き出せません。最初に考えるべきは「なぜこの業務は時間がかかるのか」や「効率の悪い業務は具体的にどこか」ということです。適切な問いは、結果的に業務フローの見直しや改善といった課題につながります。ITエンジニアは、その課題の解決策をシステムの視点から考えることで事業を作ることができます。

 

ただし、日常生活で疑問を感じることはいくつもあります。そのすべてが事業になるわけではありません。ビジネスの視点で考えると、問いの価値は玉石混淆(ぎょくせきこんこう)で、社会を変えるくらい大きなインパクトを生み出す可能性を秘めた問いもあれば、誰も注目せず、解決しても誰も喜ばないような問いもあります。そのような濃淡があることを踏まえて、問いを正しく設定することが大事なのです。

 

アインシュタインは「ある問題の解決に1時間を与えられたら、そのうちの55分は正しい問いを定義することに費やすだろう」と言った、といわれています。実際にはアインシュタイン本人がそう言ったという証拠や文献が何一つ残されていないので、後世の人が勝手に考えた創作かもしれません。

 

そうであってもこのいかにもな文章は、適切な問いがいかに大切か、ということを端的に示しています。もし問いが間違っていれば、その間違った問いに正しい答えを見つけたとしてもまったく意味のないものになるからです。

 

アインシュタインのこの言葉は、人とAIの役割の違いを表した言葉と読み取ることもできます。AIは問いに対する答えを出すことが得意ですが、問いそのものを生み出すことはできません。現在では「AIを使うAI」といったものも登場していますが、その「AIを使うAI」に最初の問いを投げかけるのは、やはり人間です。

 

だからこそ、人は正しい問いを考えることに時間と労力を費やさなければなりません。

 

AIはすぐに答えを出せるため、60分のうちの5分もあれば十分です。しかし、そもそも問いが間違っていれば、AIが導き出した答えは誰の役にも立たないのです。

 

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次ページ問いの「深堀り」が実践されにくいワケ
Nonテクニカルスキル 生成AI時代にITエンジニアが身につけるべき能力

Nonテクニカルスキル 生成AI時代にITエンジニアが身につけるべき能力

谷 誠之

幻冬舎メディアコンサルティング

技術だけでは、生き残れない AI時代、ITエンジニアに求められるのは技術“以外”の実践力 生成AIを筆頭に、加速度的にIT技術が進歩する現代社会。システム開発や保守運用などさまざまな現場で、高度なITスキルを持つエン…

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