(※写真はイメージです/PIXTA)

昨今、毎日の食事に対する「健康志向」は、より一層高まりを見せています。しかしその一方で、「健康」を意識しすぎるあまり、サプリメント中心の食生活や、動物性たんぱくを一切取らない完全菜食などの極端な選択に走る人も少なくありません。本記事では、丹野智宙氏監修・ReLaboプロジェクトチーム氏の著書『週末ウエルネストラベル 自分を見つめ直す旅』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、「食べること」の歓びを通じて健康と豊かな人生を追求する「ウエルネスガストロノミー」の理念と実践方法について解説します。

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新しい食の概念“ウエルネスガストロノミー”とは 

 

健康志向の食生活は、いまや特別なことではなく、あたり前の習慣となりつつあります。栄養素やカロリーを気にする人や、産地にこだわる人が増え、食を通じて健康を意識することは一種の「たしなみ」といえるほどです。

 

ところが、健康を追求するあまり「美味しい」という感覚を後回しにしていないでしょうか。苦手な味でも健康に良いからと我慢して食べたり、好きではない食感を無理に受け入れたりする経験は多くの人にあるはずです。しかし、食事は栄養を摂るだけの行為ではありません。「美味しい」と感じる喜びや、大切な人と一緒に食べる幸福感を通じて、心を豊かにする大切な行為でもあります。健康にフォーカスしすぎて食の喜びが薄れてしまえば、心と体の調和を目指す「ウエルネス」の本質から遠ざかってしまいます。 

 

そこで提案したいのが「ウエルネスガストロノミー(Wellnessgastronomie)」という概念です。ガストロノミーとは「美食」を意味し、それをウエルネスと掛け合わせた造語です。健康と美味しさを両立させて幸福を感じることは、ウエルネスには欠かせません。人間の基本的な営みである食から、豊かな人生を築き上げるきっかけをつかむことができるのです。

 

目の前に並んだ料理を一口食べた瞬間、思わず「美味しい!」と声がこぼれることがあります。このたった一言には、言葉にしきれないほどの深い喜びが込められ、心までが満たされる感覚が表現されています。「美味しい」という言葉は、年齢や国境を超えた普遍的な表現ですが、その意味を丁寧に考えてみると、料理が私たちに与えてくれる豊かさに気づかされます。 

 

人には「視覚」「聴覚」「嗅覚」「触覚」そして「味覚」という5つの感覚があり、それらは総称して「五感」と呼ばれています。食べ物や飲み物を味わうとき、働いているのは味覚だけではなく、ほかの感覚もフルに働いています。  

 

目に映る料理の美しさ、調理中、そして皿の上で奏でられる料理の音、食欲をかき立てる料理の香り、口にしたときの舌触りや歯触り、箸やフォークを通して感じる食材の柔らかさ、そして、口の中で広がるさまざまな味。美味しさを感じるのには、五感以外にも要素があります。

 

嬉しいことがあったときの食事、大切な人と会話しながらの食事、心が躍るような場所での食事……シチュエーションや心理状態のほかにも、調理の工程や食材の調達方法などの説明を聞くことで、料理の味わいが変わることも、珍しくありません。 

 

こうしたすべての感覚が交わり、一体となって作り上げられるものが「美味しさ」です。しかも、この背景にあるストーリーが、大きな役割を果たしています。 

 

手間ひまをかけた調理や、料理に込められた作り手の思いや技術。家族や友人と笑顔で囲む食卓や、大好きな場所で食べる特別な一皿。これらの瞬間は、どれも「美味しさ」と結びついているのです。 

 

一方で現代では、健康や栄養ばかりが重視されるあまり、カロリーや糖質といった数値が食事選びの優先基準になることが増えています。そのため、本来の「食の喜び」が置き去りにされることも少なくありません。 

 

もちろん、健康のために栄養素を気にすることは大切ですが、そこに加えて、五感をフルに働かせて「味わう」ことの大切さを再確認したいものです。

 

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本連載は、2025年8月1日に刊行された丹野智宙氏監修・ReLaboプロジェクトチーム氏の著書『週末ウエルネストラベル 自分を見つめ直す旅』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部抜粋・再編集したものです。

週末ウエルネストラベル 自分を見つめ直す旅

週末ウエルネストラベル 自分を見つめ直す旅

丹野 智宙(監修), ReLaboプロジェクトチーム(著者)

幻冬舎メディアコンサルティング

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