米金利低下など米ドル安要因に鈍い反応の理由とは?
これを受けて、金融政策を反映する日米2年債利回り差(米ドル優位・円劣位)は一段と縮小、これまでの関係を参考にすると米ドル/円は145円を割れるまで下落してもおかしくないと見られますが、その意味では金利差の割に米ドル/円の「下げ渋り」が目立っています(図表4参照)。
ではその原因はどのようなものでしょうか。
CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジションは、主要な5通貨(円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドル)を対象にしたもので見ると足元では小幅な買い越し、ほとんどニュートラルとなっています(図表5参照)。
つまり、これまで見てきた金利差から見た米ドル「下げ渋り」が、行き過ぎた投機的米ドル買いの結果ということではなく、その逆にすでに米ドルが「売られすぎ」となっていることから米ドル売り材料への反応が鈍くなっているといったことでもないそうです。
ただし、米ドルのポジションを、円とユーロの2通貨だけを対象にしたもので見ると、4月以降記録的な「売られすぎ」が続いています(図表6参照)。
4月のトランプ大統領による相互関税発表をきっかけに「米国売り」が拡大、米ドルも急落する場面がありました。そういったなかで起こった円やユーロに対する米ドル「売られすぎ」の状況がその後も続いていることから、金利差縮小といった米ドル売り要因への反応が鈍くなっている可能性はあるのではないでしょうか。
今週の注目点:米CPI等の結果は大幅利下げや連続利下げに影響か
テクニカルには146円台サポート続くかに注目
今週は、PPI(生産者物価指数)、CPI(消費者物価指数)など米インフレ指標の発表が予定されています。すでに見てきた雇用統計の結果などにより、米CPI等の結果でも、9月FOMCでの利下げ再開との見通しが変わる可能性はほぼないでしょう。米CPI等の結果は、雇用統計の結果を受けて浮上した9月FOMC0.5%利下げや10月以降の連続利下げの可能性を左右する要因になるのではないでしょうか。
米ドル/円は雇用統計発表などを受けて急落する場面もあったものの、7月からサポートされている146円台を割り込むまでには至りませんでした。その背景としては、すでに見てきたように米金利低下などの米ドル安要因への反応が鈍い状況が続いているということが大きいのではないでしょうか。その意味では、米ドル安・円高がさらに広がるかは、ある意味では米利下げ見通し以上に、146円台のサポートを割れるかが重要になるかもしれません。
見え隠れする円安を容認しない日米の姿勢=今週の予想レンジは145~149円
一方米ドル安要因への反応が鈍いのは、米ドル「売られすぎ」の影響ということなら、その修正で米ドル高・円安に振れやすい面はあるでしょう。ただし日米間税交渉の合意による不確実性の低下などから日銀による早期利上げの可能性も着実に高まっていると考えられます。とくに円安圏で、植田日銀総裁とベッセント財務長官や石破総理の会談が話題に出てくるのは、一段の円安を容認しない観点から日銀利上げを検討しているようにも感じられます。その意味では、米ドル高・円安にもおのずと限度があるのではないでしょうか。
以上を踏まえ、今週の米ドル/円は145~149円で予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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