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法人の内部留保課税
減税が議論されると、その財源問題が浮上します。その際、一部からは法人の内部留保が多額であることを理由に、これに課税すべきだとの意見が出されます。
財務省が2024年9月2日に発表した法人企業統計調査によれば、企業の利益から税金や配当を差し引いた「内部留保(利益剰余金)」は2023年度末で600兆9,857億円に達しました。
なお、財務省が2017年に作成した「法人企業統計」によれば、全産業(金融業・保険業を含む)の利益剰余金は507兆4,454億円であり、7年間で約100兆円増加したことになります。
要するに、法人が利益を社外に還元せず「ため込みすぎている」という批判です。この意見に賛同する声もある一方で、反対意見が存在することも認識する必要があります。
内部留保課税への批判
法人が内部留保を増加させていることに対する批判論は、主に以下の観点から展開されています。
(1)経営の観点からの批判
論点は、法人が人件費などを抑制して利益を増やし、配当を低く抑えつつ利益を内部に留保しているという認識です。消費税減税の財源確保の観点から、法人の内部留保に課税すべきだという意見が一部政党から出ています。
しかし、専門家の分析によれば、内部留保に関しては誤解が少なくありません。会計上、貸借対照表の貸方に計上される利益剰余金は、借方に現金預金や固定資産など具体的な資産として表されます。
つまり「内部留保=現金の塊」という単純な理解は誤りであり、経営の観点からは、内部留保をどのように活用・活性化するかが重要であると指摘されています。
(2)外国法人との比較に基づく批判
日本で内部留保の多い上位3社(2023年)は、①トヨタ(29兆円)、②三菱UFJ(18兆円)、③日本郵政(15兆円)です。
一方、内部留保を議論する際には「純現金残高(現金保有残高-有利子負債)」を基準とすべきとの見解もあります。現金保有高ランキングでは、任天堂(9,926億円)、信越化学工業(8,029億円)、SMC(5,761億円)が上位を占めています。
国際競争力の観点からは、欧米法人と比べて日本法人は内部留保・現金保有高のいずれにおいても劣後しているとの主張もあります。
(3)二重課税防止の観点からの反対論
法人税によって法人所得にはすでに課税されています。課税後の利益を内部留保したうえで、さらに留保金課税を行うことは「二重課税」であるとの批判があります。
もっとも、戦時体制前後には戦時利得税など類似の課税が欧米でも行われてきました。異なる種類の税目であることから「厳密な意味での二重課税ではなく多重課税」と分析する見解もあり、二重課税論は内部留保課税の創設を阻止する論拠としてはやや弱いとも考えられます。
矢内一好
国際課税研究所首席研究員
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