早期終了と調査官の謝罪
翌日、B社員からの聞き取りを担当調査官に電話で説明すると、驚いた様子の調査官が、再度B社員の聞き取りを要求したが、結果が覆ることはなかった。
お盆休みが終わった8月末、今度はこちら側が税務署を呼びだす番だ。筆者は統括官に調査状況の説明を要求したが、担当調査官2名が来社した。
筆者 「統括官はどうしたの?」
調査官「本日は研修で来ることができません」
筆者「謝りにも来られないようじゃ統括官失格だね。ところで調査結果はどうなったの?」
調査官「先生のおっしゃるとおり、調査は間違いでした」
筆者「口座を貸したB社員が悪いのは間違いないが、口座内容を確認して無予告調査に踏み切ったのだから、事案の分析が弱いんじゃないの?」
調査官「…」
筆者「口座の動きを見れば操っている者がわかるはずだ。顧問先とあなた方のターゲットは取引がない。外注費の流れやB社員の口座の動きを見れば、顧問先へのキックバックではないことが分析できるはずだ」
調査官「申し訳ありませんでした」
結局、顧問先は申告是認。筆者は絶望的な思いだった。調査能力の衰えが如実に表れている。この程度の調査能力に付き合わされ、お盆前の大事な一週間をつぶされた顧問先の社員がかわいそうでならず、怒りがこみ上げてきた。
筆者「君たちの調査のせいで、何人の夏休みが吹っ飛んだと思っているんだ。無予告調査のプレッシャーと、業務が滞ったためにたくさんの取引先に謝りにいかなければならなかった」
調査官「本当に申し訳ありませんでした」
それにしても、担当統括官は何を差し置いても、まず謝りに来るべきだろう。筆者もトクチョウ班を率いていたときに無予告調査で失敗したことがあるが、調査が失敗とわかると、すぐに連絡して謝罪に行っていた。
無予告調査は“やむをえない場合”に行う調査だ。ヨミで行う調査には失敗がつきものだが、納税者に過度な負担がかかることは間違いない。
最後に、マルサの強制調査以外の税務調査はすべて任意調査であって、納税者の協力のもとに行われる。
税務調査の最盛期に入る9月。突然の無予告調査への対応を、顧問税理士に再確認しておくようおススメする。
上田 二郎
元国税査察官/税理士
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