遺族年金「夫の年金の3/4」がもらえるのは専業主婦だけ?「共働き妻」が“対象外”になる、非情な年金格差【FPが解説】

遺族年金「夫の年金の3/4」がもらえるのは専業主婦だけ?「共働き妻」が“対象外”になる、非情な年金格差【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

遺族年金は、残された配偶者の生活を支える重要な制度ですが、誰もが想定通りに受け取れるわけではありません。故人の生前の働き方や夫婦の年齢構成、残された側の収入状況によっては、受給額が大きく変わります。本稿では、酒井富士子氏による著書『60分でわかる! 新・年金 超入門』(技術評論社)より、遺族年金における注意点について解説します。

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共働き夫婦は配偶者が亡くなっても遺族年金が出ないことも

共働き夫婦の場合、双方が老齢厚生年金を受給でき、例えば月30万円の年金収入があれば、老後も安定した生活が可能に思えます。しかし、どちらかが亡くなった際、遺族年金に関する制度を理解していないと、思わぬ経済的困難に直面する可能性があります。

 

65歳以上の夫婦の場合、遺族厚生年金の支給額は、亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3が基準になります。ところが、残された配偶者が自身の老齢厚生年金をすでに受給している場合には、「遺族厚生年金と自身の老齢厚生年金を比較し、金額の多い方のみが支給される」というルールが適用されます。

 

そのため、図表4の例のように、妻の老齢厚生年金が夫の老齢厚生年金よりも多い場合は、夫の遺族厚生年金は一切受け取れなくなってしまうのです。つまり、配偶者の年金がなくなったのにもかかわらず、自分の年金しか残らないという状況に陥ってしまうわけです。

 

月30万円の年金でやりくりしていた家庭が、残された配偶者の年金のみで生活するのは、かなり厳しい現実です。特に、2人分の年金をもとに生活水準を高く保っていた場合や、2人分の年金で住宅ローンや生活費をまかなっていた場合には、家計が急激に圧迫されることになるため、注意が必要です。

 

そのため、共働きの夫婦であっても、片方が60代で亡くなった時のことを想定して、貯蓄を準備しておく、終身保険に加入しておくなどの備えをしておくことが大切です。

 

★試算例 夫:年収400万円/妻:年収550万円、厚生年金40年加入

出典:『60分でわかる!新・年金超入門』(技術評論社)より抜粋
[図表4]夫婦ともに会社員だった場合(妻の方が夫より年金額が多い場合) 出典:『60分でわかる!新・年金超入門』(技術評論社)より抜粋

 

■65歳からの遺族厚生年金の支給方式

 

・遺族厚生年金の額(1)

亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分×3/4

 

・遺族厚生年金の額(2)

遺族厚生年金の額×2/3+老齢厚生年金の額×1/2

 

〈まとめ〉

■共働き夫婦の場合、遺族年金が1円も支給されないことも

■いざという時に備えて貯蓄や終身保険などで事前の備えが必要

 

 

酒井 富士子
株式会社回遊舎 代表取締役
経済ジャーナリスト

 

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※本連載は、酒井富士子氏による著書『60分でわかる! 新・年金 超入門』(技術評論社)より一部を抜粋・再編集したものです。

60分でわかる! 新・年金 超入門

60分でわかる! 新・年金 超入門

酒井 富士子

技術評論社

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