(※写真はイメージです/PIXTA)

富裕層にとって「移住」は単なる居住地の変更にとどまりません。移住先や在留資格の選択次第で、相続税・贈与税・出国税などの負担が大きく変わる場合があります。移住により、思わぬ資産減少の可能性もあることから、移住前にエステートプランニングを策定又は見直すことが必要となります。 

日本から外国に移住する場合

日本から外国へ移住する目的はさまざまです。ビジネスの拡大、資産運用のためにキャピタルゲイン課税がない(または低い)国を選ぶ場合、純粋に生活環境を変える場合、あるいは子どもの教育を国際的な環境で行うため、といった理由があります。

 

特に富裕層の場合、日本の高い相続税・贈与税を回避するため、海外居住中に資産移転を行いたいというニーズが強く、そのために移住計画とタックスプランニングを一体で検討する必要があります。

 

この際、必ず問題となるのが国外転出時課税(出国税)です。これは、株式等の有価証券を時価1億円以上保有する居住者が海外に転出する際、出国時に売却したものとみなして含み益に課税する制度で、2015年から導入されました。この制度や相続税の納税義務範囲の拡大により、多くの外国籍居住者が日本からの移住を選択する動きが見られ、大きな衝撃を与えました。

 

現在では高度外国人材の誘致を妨げないよう、就労系ビザ保有者については要件を満たす場合に国外財産を課税対象外とする措置が取られていますが、それでも日本の相続税・贈与税は依然として移住のハードルとなっています。

 

もっとも、タックスプランニングを目的に移住したものの、生活環境や文化的要因、医療・公共サービスの違いなどにより、プランニングを完了する前に日本へ帰国する家族も少なくありません。税務対策に集中するあまり、かえってQOL(生活の質)を損なう事例もあります。そのため、移住の計画は税務だけでなく生活面も含めて慎重に検討する必要があります。

 

タックスプランニングを完了した後は、現地での在留資格取得、居住場所の確保、子どもの教育機関の選定などを専門家とともに準備することになります。外国から日本に移住する場合と同様、遅くとも移住希望の1年以上前から準備を開始するのが望ましいと考えられます。

 

 

酒井 ひとみ
シティユーワ法律事務所

 

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