「大学まで安心して通ってほしいから」善意で始めた契約
都内在住の吉田明子さん(仮名・68歳)は、2年前に初孫が生まれたことをきっかけに、学資保険の契約を決意しました。
「娘夫婦は共働きで忙しくて、貯蓄に回す余裕があるようには見えなかった。何か手助けできたらと思って」——明子さんは、月々2万円、18歳満期で約400万円の学資保険を契約。受取人には“孫”を指定しました。
しかし、税理士の知人にふと相談したところ、思いがけない指摘を受けたといいます。
「これ、契約の仕方によっては贈与扱いになる可能性があるよ」——。
学資保険などで税務上の扱いがどうなるかは、「誰が契約者で、誰が保険料を支払い、誰が保険金を受け取るか」の組み合わせによって変わります。主に以下のようなケースが考えられます。
●祖母が契約者・保険料の支払者で、孫が受取人の場合
→ 満期金などを孫が受け取る際、「贈与」とみなされる可能性があります。贈与税の課税対象になることもあるため注意が必要です。
●祖母が保険料を支払い、母親が契約者で、孫が受取人の場合
→ この場合も、実質的な保険料の提供者は祖母となるため、受け取り時に「祖母から孫への贈与」と判断されるリスクがあります。
●母親が契約者・保険料の支払者で、孫が受取人の場合
→ 原則として贈与とはみなされません。保護者が自分の子どものために契約した学資保険と同様の扱いになります。
つまり、「契約者」「支払者」「受取人」の組み合わせ次第で、思わぬ課税リスクが発生するのが、保険契約の難しいところです。
贈与税の非課税枠は年間110万円。満期金がこれを超える場合、贈与税申告や納税が必要になる可能性があるため、注意が必要です。
「老後の蓄えから出してでも、孫のためになるなら」と契約した明子さんでしたが、今では「娘たちに迷惑をかけたくない」と、一度解約を検討しています。
「善意が、課税対象だなんて想像もしていなかった。しっかり調べずに契約した自分にも責任があるけれど、正直やりきれない気持ちです」と明子さん。
