寄付先の問題
富裕層の方々からは、遺贈だけでなく、生前寄付を含めた寄付先についてのご相談をいただくことがあります。
依頼者の皆さまに共通する思いは、「自ら築いた財産の使途を明確にし、具体的な目的のために社会に役立てたい」というものです。既存の団体に寄付される方も多くいらっしゃいますが、その場合、使途が特定できなかったり、特定できても抽象的な範囲にとどまることがあります。そのため、「自分が指定した目的のために寄付金を使ってほしい」と希望される方は、寄付先や仕組みづくりを熟慮される傾向にあります。
寄付の目的や使途がすでに明確である場合には、依頼者のご希望どおりに寄付金が活用できる仕組み(たとえば公益財団法人の設立など)を整える支援を、弁護士として行います。
ただし、法人を設立する場合には継続的な運営が必要となり、一定のランニングコストも伴う点に留意が必要です。そこで、寄付の目的がまだ具体化していない場合や、大規模な枠組みまでは不要な場合には、フィランソロピー支援を専門に行う団体をご紹介し、依頼者が思いを言語化し仕組みを整える段階をサポートいただきます。そのうえで、計画が具体化した段階で私たちが法務面の支援を行う、という流れになります。
「フィランソロピー」とは、聞き慣れない方もいるかもしれませんが、個人や企業が行う社会貢献活動の総称です。欧米ではエステートプランニングの専門家がフィランソロピー支援を担っており、日本でも、個人や企業の「社会に貢献したい」という思いを具体的な形にすることを専門とする団体が増えています。寄付先のイメージがまだ明確でない方は、こうした団体の支援を検討されてもよいでしょう。
見守り
同居または近くに健康な親族がいない場合、高齢者ご夫婦やおひとり様の日常生活の見守りが課題となります。財産管理委任契約や任意後見契約の前段階として締結される見守り契約には限界があるため、自治体による行政サービスに加え、民間の見守りサービスを併用することも検討すべきです。
また、資金的に余裕がある場合は、元気なうちに自分の生活スタイルに合った介護付き老人ホームを確保しておくことも、生活の質(QOL)を維持するうえで有用です。
