日本の教育費と税制のギャップ …贈与税・控除制度・日米比較から考える【国際税理士が解説】

日本の教育費と税制のギャップ …贈与税・控除制度・日米比較から考える【国際税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

日本では祖父母から孫への教育資金贈与に非課税制度が設けられ、高校授業料の実質無償化も進んでいます。しかし大学を含む教育費全般の負担は依然として重く、税制上の支援は十分とはいえません。アメリカとの比較を通じて、日本の教育費と税制の課題を整理します。

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教育資金一括贈与の非課税制度

祖父母が孫に教育資金を一括して贈与する場合、信託銀行などを通じて「教育資金一括贈与の非課税制度」を利用すれば、孫1人につき1,500万円まで贈与税がかからない仕組みがあります。これは若い世代の教育・子育てを後押しするために導入された制度です。

 

通常の贈与でも「教育費」や「生活費」は、必要なときに必要な分を直接支払えば非課税とされています。たとえば入学金や授業料を祖父母が学校に直接振り込む場合は非課税ですが、将来の学費としてまとまった金額を孫に渡すと、使い残しが出た時点で贈与税の対象になります。

 

日本でも教育支援策があり、高校授業料の実質無償化(高等学校等就学支援金制度)が導入されています。しかし大学を含む広範な教育費については、税制による直接的な控除や十分な軽減策は整っていないのが実情です。

アメリカにおける教育費控除の仕組み

アメリカでは教育費の扱いがより手厚く、一定の授業料支出が所得控除の対象になります。さらに大学によっては「所得が高い年に授業料を4年分前払いすれば節税できる」という仕組みまで用意されています(ただし退学しても返金はされないなどの制約あり)。教育費は軍事費と同様に、国家を支えるための不可欠な投資とみなされているのです。

 

日本の所得税には配偶者控除や扶養控除、医療費控除などがありますが、教育費そのものを控除する制度は存在しません。子どもが公立に進学するか私立に進学するかで家庭の負担は大きく変わり、私立に通わせる家庭では「家一軒分の出費」となるケースも少なくありません。

 

日本とアメリカの所得税率の差は10%程度に過ぎません。しかし、適用できる所得控除の種類や上限額が大きく異なるため、単純に税率だけで比較することはできないのです。

 

 

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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