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アメリカと日本の寄付文化の違い
日本では、東京国立博物館や京都国立博物館など、多くの著名な美術館が国公立です。ブリヂストン美術館や山種美術館のように、財団法人が設立・運営する施設もありますが、これらも創設者や企業の拠出金と入場料収入で運営されています。
一方、アメリカの代表的な美術館であるニューヨークのメトロポリタン美術館は、国立・市立・州立のいずれでもなく、財団によって運営されています。入館案内には「Admission Recommended Adults$25」と書かれていますが、これは「推奨寄付額25ドル」という意味で、実際には1ドルでも入館可能です。いわば、日本のお寺における「お布施」に近い仕組みです。
しかも、この寄付額は寄付金控除の対象となります。この方式はメトロポリタン美術館に限らず、ユージン美術館やボストン交響楽団など、多くの文化施設で採用されています。
裁量は富裕層に委ねられている!
アメリカでは、富裕層への税率が比較的低いのは、資金の使い道を行政ではなく民間、特に富裕層の裁量に委ねることで、自由で多様な文化を育むためです。
この文化的背景は17世紀初頭にまでさかのぼります。若くして世を去ったジョン・ハーバードが、手持ちの資金と400冊の蔵書を寄贈して設立した学校が、後に「ハーバード大学」と名付けられたことに端を発し、寄付を基盤とした文化・制度が根付いてきました。これは日本の江戸時代や近代とはまったく異なる歴史的土壌です。
寄付総額を年間で比べると、アメリカは日本の数百倍にのぼります。寄付を受ける側は必ず監査法人の監査を受け、資金の使途を詳細に説明する責任があります。
富裕層が寄付先を選ぶ際は、監査証明のある慈善団体を重視します。寄付金がどのように使われ、どれだけの人々に喜びや恩恵をもたらしたのかを確認し、その成果が寄付者の誇りや満足感につながるのです。
一方、日本ではどうでしょうか。東日本大震災の際には、ソフトバンクの孫正義氏や大リーグのイチロー選手など、多くの著名人が巨額の寄付を行いました。しかし、その資金が具体的にどこで、どのように使われたのかを説明された寄付者は、どれほどいたでしょうか。なかには、寄付金が被災地とは無関係な用途に流用されたという報道もあります。
寄付者の善意が十分に活かされない背景には、資金の使途を民間が自由に決められる組織が少なく、寄付の受け皿が行政やそれに近い組織に偏っている現状があります。日本の寄付文化は、透明性や説明責任の面で、まだ大きな課題を抱えているといえるでしょう。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾
