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寡占企業における「価格競争のジレンマ」
世界中にコメを売る会社が一社しかなかったら、かなりの高価格をつけても消費者は買わざるを得ないでしょうから、その会社は相当儲かるでしょう。そういう会社を「独占企業」と呼びます。もっとも、値上げしすぎると人々はコメを食べずにパンを食べるようになってしまうので、限度がありますが…。
世界中にコメを売る会社が数社(本稿ではAとBの2社ということにします)しかない場合、「寡占」と呼びます。この場合は、事態が複雑です。AとBが「高い値段で売ろう」と約束して、両者が約束を守れば、両者合計で独占企業と同じ利益を稼ぐことができます。これを「談合」とか「カルテル」とか呼びます。
しかし、AにもBにも「約束を破って相手より少しだけ安い値段で売り、相手から客を奪いたい」という誘惑があります。
Aは考えます。
「Bが約束を守るか否か、わからない。仮にBが約束を守るとしよう。わが社が約束を守れば儲かるが、約束を破れば大儲けできる」
↓
「仮にBが約束を破るとしよう。わが社が約束を守れば損をするが、約束を破れば損をせずに済む」
↓
「どちらにしろ、約束を破った方が得だから、約束を破ろう!」
Bもまったく同じことを考えるので、結局、AもBも約束を破ることになるのです。
「繰り返しのゲーム」だと事情は異なる
以上は、意思決定が一度だけしか行われない場合の話でしたが、実際のビジネスでは、意思決定は毎日行われています。そうなると、話は変わって来ます。たとえば、Aが以下のように宣言したとします。
「わが社は、今日は約束を守る。そして、Bが約束を守るか否かを観察する」
「Bが約束を守れば、明日もわが社は約束を守るが、Bが約束を破れば、明日からわが社も約束を破る」
というのです。Bは考えます。
「今日だけのことを考えれば、約束を破ったほうが得だ。しかし、そうすると明日からAも約束を破るので、儲けることができなくなってしまう」
「そんなことなら、約束を守り続けて、ずっと儲け続けるほうが得だ」
ということで、AもBもずっと約束を守る…ということになるわけです。
カルテルは国内では独占禁止法に違反しますが、国際的にはそんな法律はないので、たとえば石油ショックを引き起こしたOPECのような組織が存在することになります。国内でもときどき談合が摘発されますが、「何十年も前から談合してきたのがバレた」ということは、つまり「それだけ談合が続いており、その間ずっとバレなかった」ということなのですね。
もっとも、カルテルがうまくいくとは限りません。なんらかの拍子にどちらかが約束を破ると、そのまま値引き合戦に突入する可能性があるからです。たとえば、どちらかが「価格は約束どおり高いままにして、オマケを付ける」ということを始めれば、それを引き金として値引き合戦が始まるかもしれません。
離島にガソリンスタンドが2軒だけある場合などでは、どちらかが倒産するまで熾烈な値引き合戦が続くかもしれません。「値引き合戦は辛いが、相手が倒産するまでガマンすれば、独占企業として大儲けができる」とお互いが考えるからです。
牛丼店の値引き合戦であれば、ラーメン業界から客が流れてきて両店とも満席になる可能性もありますが、離島のガソリンスタンドではそうしたことは期待薄ですからね。
「当店は最安値を保証します!」の真意
家電量販店の「最安値宣言」を見たことがある人も多いでしょう。「当店は最安値を保証します。当店より安い店をみつけたら、チラシをもらってきて見せてください。その値段まで当店も値下げします」というわけです。
それを見た客は「客に優しい店だ」と感じるでしょうが、それを見たライバル店のスパイはそうは感じません。「わかってるだろうな? お前が値下げをしたら、オレも必ず値下げをするぞ。値下げして、オレから客を奪おうなどと考えるんじゃないぞ!」と読めるからです。客によいイメージを持ってもらい、独占禁止法には違反せず、結果としてカルテルと同じ効果が期待できる、優れた戦略ですね。
ところで、家電量販店の最安値宣言はよく見ますが、牛丼店の最安値宣言は見かけません。なぜでしょうか。それは、家電量販店は扱っている商品が同じなので価格の比較が容易である一方、牛丼店は扱っている商品の品質が異なるので、最安値か否かの判断が難しいからなのでしょう。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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