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JT(日本たばこ産業)の多国籍戦略
(1)JTの概要と経営効率化の動き
日本たばこ産業株式会社(JT)は、1985年に日本専売公社から事業を引き継ぎ、特殊会社として設立されました。
2021年2月10日の報道によれば、JTは国内におけるたばこ事業の低迷を背景に、正社員約1,000人規模の希望退職を募り、福岡県内の2工場を閉鎖するなど、経営の効率化を進めました。また、本社機能をスイス・ジュネーブのJTインターナショナルへ移転することも発表しています。
JTは、積極的に海外企業のM&A(合併・買収)を展開しており、2020年12月期の連結売上収益(約2.1兆円)のうち、6割超を海外事業が占めています。
(2)JTの海外展開と買収実績
JTは、日本たばこ産業株式会社法に基づく特殊会社であり、株式の約3分の1は国が保有しています。民営化当初は、国内に30か所以上の工場を構え、従業員数も3万人を超えていましたが、現在では大幅に規模を縮小し、海外展開を強化しています。
主な買収実績は以下のとおりです。
- 2007年:英国ギャラハー社を約2兆2,000億円で買収
- 2016年:レイノルズ・アメリカンの米国外事業を約6,000億円で取得
- 2017年:フィリピンの「マイティー・コーポレーション」の関連資産を約1,100億円で取得
- 同年:インドネシアの「カリヤディビア・マハディカ」およびその流通会社「スーリヤ・ムスティカ・ヌサンタラ」の2社を1,100億円で買収
- 2018年:ロシア第4位のたばこメーカー「ドンスコイ・タバック」を1,900億円で取得
- この他、バングラデシュ第2位のたばこメーカーやスーダンの企業なども買収済み
(3)経営管理と租税戦略の課題
JTは、前述のとおりフィリピン、インドネシア、ロシア、バングラデシュ、スーダンといった新興国市場に進出しており、M&Aは社内スタッフによって推進されています。ただし、事業多角化の一環として行われたこれらの買収には、経営上のリスクも指摘されています。
また、税務面では、スイスに持株会社を設立し、日本法人などがその傘下に入る形での組織再編が行われました。これは、スイスの優遇税制を活用した租税戦略の一環とみられます。
一方で、買収先となった新興国の多くでは、税務環境が整備されておらず、現地で法人税を納める企業は外資系企業に限定されるケースもあります。そのため、現地法人の税務リスク管理や、各国の税務当局とのトラブル回避といった課題が残されています。
矢内一好
国際課税研究所首席研究員
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