日本で高福祉・高負担が難しい理由…日本がスウェーデンになれない“構造的な違い”とは【国際税務の専門家が解説】

日本で高福祉・高負担が難しい理由…日本がスウェーデンになれない“構造的な違い”とは【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

財政難にあえぐ日本で、手厚い社会保障を誇る北欧諸国をお手本にすべきだ、という議論が絶えません。しかし、その高福祉モデルを、そのまま日本に持ち込むことは本当に可能なのでしょうか。実は、両者の間には、一人当たりGDPの経済力、1億人を超える人口規模、そして福祉国家が形成された歴史的・政治的背景など、単純な比較では見過ごされがちな「構造的な違い」が存在します。本稿では、日本が北欧モデルを安易に模倣できない根本的な理由について、7月に『富裕層が知っておきたい世界の税制【大洋州、アジア・中東、アメリカ編】』を刊行した矢内一好氏が解説します。

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日本が高福祉・高負担となるのが難しい理由

「高福祉・高負担」の制度を日本でも実現すべきか──少子高齢化と財政赤字が進むなか、こうした議論が再燃しています。

 

一部では、消費税率を10%以上に引き上げ、高齢者の医療費や若年層の教育費を無償化すべきだという声もあります。北欧諸国を手本とする意見もありますが、日本にその再現は本当に可能なのでしょうか。人口規模、経済力、政治体制、国民意識など、北欧諸国と日本の間にある「構造的な違い」から、その現実性を探ります。

消費税の税率を10%以上に引き上げるという意見

消費税の減税を求める声が強まるなかで、一部では「いずれは税率引き上げが避けられない」との意見もあります。増税の成果として、高齢者への医療費無償化や、若年層への教育費無償化などが実現されると主張する声もあります。しかし、これに対しては懐疑的な見方もあり、その実現可能性が問われています。

 

高福祉・高負担の代表例としては、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどの北欧諸国が挙げられます。こうした国々では高い消費税率が導入されているため、日本でも「消費税率引き上げによって高福祉を実現できる」といった議論が展開されがちです。しかし、その論拠には一定の疑問も残ります。

次ページ北欧諸国における高福祉実現の背景
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