亡き父が遺したのは2億2,500万円と「人間国宝」の作品だった…気になる評価額と〈60代長男〉が公益財団法人への寄付を決めたワケ【相続の専門家が解説】

亡き父が遺したのは2億2,500万円と「人間国宝」の作品だった…気になる評価額と〈60代長男〉が公益財団法人への寄付を決めたワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

相続財産の中に「骨董品」や「古書」が含まれている場合、どのように評価し、相続税申告を行うべきなのでしょうか? 申告漏れが起きやすい分野でありながら、相続人自身がその価値を見落としているケースも少なくありません。本記事では、実際にあった2つの相続事例を通して、美術品や古書の取り扱い、査定、寄付にまつわる注意点について相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が、解説します。

土地持ち資産家 古書が300点以上ある笙子さんの場合

笙子さん(50代女性)の父親(80代)は複数の土地を所有する土地持ち資産家です。先代からの土地を相続して、守ってきました。父親が10代目という家系です。

 

父親は自分の土地を生かして、アパート経営をしてきました。また道路拡幅などにより国に土地を買収されたこともあり、一時期、相当な預金があり、さらに毎月、家賃が入ってきますので、お金に困ったことはないと言えます。

 

父親の趣味は美術商巡りでした。贔屓(ひいき)にしている美術商があり、毎月のように出かけては浮世絵などの和書、洋書を購入していたといいます。父親の楽しみでしたので、家族も黙認していましたが、父親の部屋は古書がぎっしり。

 

古書は美術商で鑑定

父親が亡くなったとき、相続税の申告が必要でしたので、財産の評価をするのですが、古書は美術商に鑑定評価をしてもらいました。

 

鑑定の結果、和本・浮世絵一括 3,373,000円  美術書一括1,501,000円 洋書一式175,000円 計 5,049,000円となりました。

 

その数、約300点。高いもので「源氏五十四帖」(豊国画)55,000円、「近江八景」(広重画)40,000円、「虚無僧と美人」(歌麿画)50,000円などですが、ほとんどが10,000円から20,000円ほど。

 

父親が購入した当時は数千万円ほどしたと考えられますが、相続時の市場価値はその10分の1以下にまで下がっていました。

 

通常、数が少なければ「家財道具一式」として申告しますが、今回は約300点とまとまった数があったこと、また預金の引き出しが頻繁にあり、それらが現金で支払われたと推察される点とも整合するため、鑑定評価を添付して相続税の申告を行いました。 

税務調査をされないような相続税の申告を

骨董品や美術品は「申告漏れ」が多い財産の一つです。高価な花瓶、掛け軸、絵画、刀剣、茶道具など、一般家庭にも残されている可能性があります。

 

相続人が価値を認識していないケースも多く、後日税務調査で追徴課税されることがあります。税務調査でなぜ、そうした指摘をされるかというと、通帳の引き出し記録から多額の現金引き出しや支払いがある場合等から想定されるということです。

 

そのため、財産の中に骨董品が残されている場合は、評価の仕方や申告の仕方は税理士や専門家と相談しながら適切な評価と申告をしていくことが大事です。

 

骨董品には固定資産税の課税は基本ないため、土地や建物のような評価額は存在しません。あくまで時価評価をすることになります。

 

【まとめ】骨董品評価のポイント

項目

内容

評価方法

時価(市場売買価格または鑑定評価)

注意点

申告漏れ・価値認識不足に注意

推奨対策

生前の評価・記録の準備、必要に応じて贈与や売却

トラブル回避

鑑定書・評価書の保管、専門家への相談

 

・購入価格ではなく、相続時の時価評価となる
・美術商や買取業者に鑑定や査定をしてもらう
・公益財団法人に寄付すると非課税になる
・申告期限までに寄付して証明書を発行してもらう。

 

 

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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