亡き父が遺したのは2億2,500万円と「人間国宝」の作品だった…気になる評価額と〈60代長男〉が公益財団法人への寄付を決めたワケ【相続の専門家が解説】

亡き父が遺したのは2億2,500万円と「人間国宝」の作品だった…気になる評価額と〈60代長男〉が公益財団法人への寄付を決めたワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

相続財産の中に「骨董品」や「古書」が含まれている場合、どのように評価し、相続税申告を行うべきなのでしょうか? 申告漏れが起きやすい分野でありながら、相続人自身がその価値を見落としているケースも少なくありません。本記事では、実際にあった2つの相続事例を通して、美術品や古書の取り扱い、査定、寄付にまつわる注意点について相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が、解説します。

人間国宝の作品 大皿・壺がある将樹さんの場合

将樹さん(60代男性)の父親が亡くなり、相続税の申告が必要になりました。

 

父親の財産は自宅の他に、賃貸アパート、貸店舗や貸宅地があり、土地、建物で1億8,000万円、預金6,000万円、有価証券3,500万円、アパート建築の借入が5,000万円、総資産は2億2,500万円と確認できました。

 

相続人は長男の将樹さんはじめ、妹2人、弟1人の4人。基礎控除は5,400万円、相続税は2,620万円となりました。

自慢の骨董品がある

父親は知り合いからの紹介で、人間国宝に認定されている陶芸家に会って直に作品を購入しています。一つは直径50cm以上ある大皿、あとの2つは高さ30cm程度の壺で、作家の直筆サインもあり、箱もあります。

 

父親は子どもたちにもよく人間国宝の作家さんの話をしており、大皿や壺は家宝だとも言っていました。

 

将樹さんをはじめ、妹さんや弟さんもお父様の想いを大切にされ、最終的には長男である将樹さんが代表して相続することになりました。ただ、その際の相続税の申告がどうなるのかが気がかりでした。

 

少額のものであれば家財道具一式として個々に評価をしないこともありますが、今回は人間国宝の方の貴重な作品ということで、美術商に査定してもらうようにしました。

美術商の査定

美術商には写真による簡易査定を依頼しました。売却する場合は、現物を見てもらっての具体的な金額査定が必要ですが、相続税の申告のための査定であれば、写真での簡易査定でも問題はありません。

 

美術品買取専門店の査定は、大皿100万円~150万円、花瓶A 5~6万円、花瓶B 3~4万円となりました。

 

メールでの査定ですが、金額と査定した会社がわかれば、相続税の申告の資料として添付できると、相続税申告を担当する業務提携先の税理士からOKの判断が出ています。相続税の申告には査定の平均値により大皿125万円、花瓶A 55,000円、花瓶B 35,000円として申告をするようにしました。

記念館に寄付したい

将樹さんはいったん自分が相続するということですが、妹、弟たちと話し合い、人間国宝の方の記念館に寄付しようと方針がまとまっています。父親が家宝のように大事にしてきた作品なので、自分たちだけで鑑賞するというよりは、多くの方に見てもらえたらと考えました。

 

人間国宝として認定されている手陶芸家の方は多くの作品を残してこられたので、関係者が記念館を作り、公益財団法人として認定されています。その記念館に寄付するとなりました。

公益財団法人に寄付するなら非課税 

公益財団法人への寄付は特例があり、相続税は非課税になります。それには相続税の申告期限までに寄付をし終わり、公益財団法人より、寄付の証明書を発行してもらう必要があります。

 

詳細は国税庁のページにて説明されています。

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