税務調査の実態
税務調査と聞いても、これまで税務調査を受けたことがない人は、自分が調査の対象になることはないのではと軽く考えるケースがあります。
税務調査は、正しく申告をしているかをチェックする確認作業です。そのため、申告の義務がある個人や法人であれば、誰でも税務調査の対象となる可能性があります。
では、実際、税務調査の実施件数はどのくらいになるのでしょうか。
所得税の税務調査の実施件数
個人に対して行われる所得税の実地調査の実施件数は、令和5年事務年度は4万7,528件、令和4年事務年度は4万6,306件です。また、後述する簡易な接触も、令和5年事務年度は55万7,549件、令和4年事務年度は59万1,517件実施されており、合わせると毎年約60万件の税務調査が実施されていることとなります。
法人税の税務調査の実施件数
一方、法人に対して行われる法人税・消費税の実地調査の実施件数は、令和5年事務年度は5万9,000件、令和4年事務年度は6万2,000件、簡易な接触の実施数は令和5年事務年度が7万件、令和4年事務年度が6万6,000件です。合わせると毎年、約13万件の法人に対し、税務調査が実施されていることになります。
簡易な接触と税務調査の関係
税務調査といえば、調査官が事務所などを訪れ、帳簿書類を実際に確認しながら調査を進める税務調査を指すケースが一般的です。しかしながら、昨今では「簡易な接触」の頻度が高まっています。
簡易な接触とは
確定申告書が提出されると、税務署ではその内容をチェックします。その際、申告書の内容に誤りがあると疑われるケースも出てきます。
明らかに金額の桁を間違えて入力していると疑われる場合や控除額が間違っている場合など、軽微なミスや申告漏れがある場合に実施されるのが簡易な接触です。
簡易な接触では申告書になんらかの不備が見られるものの、現場を訪れて調査をするほどではない場合などに、電話や文書で納税者に連絡をし、自主的に修正申告を促す取り組みです。
簡易な接触の数は増加傾向に
簡易な接触は、電話や書面による連絡によって納税者の自主的な修正を促す取り組みです。簡易な接触で正しい納税を促進できるのであれば、税務署はより大きな申告漏れや申告ミスの疑いがある納税者への調査に注力できます。そのため、昨今では簡易な接触による税務調査の割合が増加しています。
令和5年事務年度における所得税と消費税に対する税務調査の場合、現場を訪れて税務調査を行う実地調査の実施件数は4万7,528件でしたが、簡易な接触の実施数は55万7,549件にも上っています。実際、簡易な接触による税務調査は、実地調査の12倍ほども実施されているのです。
また、簡易な接触による税務調査は、個人だけを対象に実施されているわけではありません。令和5年事務年度の法人税の調査実績によると、法人を対象とした簡易な接触の実施数は7万件だったと報告されています。
実地調査の件数である5万9,000件と比較した場合、法人を対象とした税務調査でも、実地調査より簡易な接触による調査の数が多くなっているのです。
税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

