今回は、税務調査で「粉飾決算」が見つかった場合の対応策を見ていきます。※本連載では、税理士法人鳥山会計代表・鳥山昌則氏の著書、『マル秘・実録 税務署との交渉術』(現代書林)の中から一部を抜粋し、節税・相続対策・不動産投資などに関する、税務署との交渉・対応術を具体例を用いて紹介します。

脱法行為として問題である「粉飾決算」

長引く不景気の中、金融機関対策上やむを得ず実際の業績よりも良く見せる、いわゆる粉飾決算をやっている場合があります。

 

「粉飾」は「脱税」の反対の用語ですが、公認会計士は上場企業の粉飾を牽制し、税務署は脱税を牽制する役割を持っています。我々税理士は「独立した公正な立場で適正な納税義務の実現を図る」という立場ですので、脱税をさせないことが使命です。しかし、近年は適正な決算ということで、粉飾決算も脱法行為として問題であるという立場でもあります。

 

粉飾決算の手口としては、次のようなことが考えられます。

①売掛金の先取りをして当期の売上を増加させる。

②買掛金、未払金の計上を翌期に回し、当期の仕入、外注費等の費用を減少させる。

③商品、原材料、仕掛品、貯蔵品等の在庫を実際より過大計上し、原価計上を翌期以後に回す。

④架空の現金売上の計上をしたり、経費の計上を自己否認して、役員借入金と相殺する。

⑤貸借対照表の表示科目を変更する。例えば、仮払金、不良債権(売掛金、貸付金等)を架空の固定資産を購入したように装う。

自分から粉飾を認識していたとは言わないほうが…

税務調査で発覚した場合は、税務署員も立場上、本当かどうか通常通りの調査手続きの中で確認します。

 

ここで注意していただきたいことは、自分から粉飾を認識していたとは言わない方が良いということです。決算の手続き上誤って、結果的に粉飾と同じ結果になってしまう場合もあるのですから、仮に売掛金の過大計上があった場合、本来は正しく修正申告(更正)して、支払った税金を還付しなくてはいけなくなります(消費税も含む)。

 

この場合、税務署員は別の項目で点数をとろうとします。赤字であっても税金がとれる項目です。例えば、「源泉所得税」「消費税」「印紙税」等です。

 

そして、結果的にいわゆるお土産があるなしにかかわらず、売掛金の訂正は翌期にきちんとすることで調査終了となることが多いのです。波風を立てず、更正の請求までして税金を戻してほしいとは考えていない会社側としても、現状を申告是認していただければ有り難いので、その方向となるのです。

 

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マル秘・実録 税務署との交渉術

マル秘・実録 税務署との交渉術

鳥山 昌則

現代書林

著者は「闘う税理士」として知られています。闘う相手は誰か? もちろん、税務署です。 闘うといっても、税務署を相手に子どもじみたケンカをする訳ではありません。事実認定をしっかり主張し、税務署に認めてもらうための交渉…

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