今回は、税務調査官が注目する「請負契約と雇用契約」の違いについて見ていきます。※本連載では、税理士法人鳥山会計代表・鳥山昌則氏の著書、『マル秘・実録 税務署との交渉術』(現代書林)の中から一部を抜粋し、節税・相続対策・不動産投資などに関する、税務署との交渉・対応術を具体例を用いて紹介します。

外注費が「給与」と見なされてしまうポイント

東京のお客様の調査事例です。会社の状況は、未払い金の計上が誤りにより過大に計上されていたのですが、調査官の視点は外注費にあり、これが実態は〝給料〞ではないかという疑念が消えないようなのです。

 

外注費を給料にすると、税務調査宮にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?

 

まず、源泉徴収漏れを指摘できます。下手をすると7年間遡って不納付加算税10%と延滞税が加算されます。

 

次に、消費税の課税仕入れを否認できます。一般課税の場合、仮に年間3000万円の外注費が給料になると〔3000万円×8/108=222万円〕の消費税が否認され7年間で約1550万円もの本税に加えて加算税、延滞税が追徴されてしまいます。

 

では、「外注費」と「給料」はどこが違うのでしょうか?「外注費」は請負契約、「給料」は雇用契約といわれます。税務調査官が指摘するのは次の点で、該当する項目が多いと「給与」ということにされてしまいます。

 

その支払いを受ける人が「個人」であり―、

①1カ所でしか働いていないこと(常用)

 

②事務所を有せず、車両その他の設備を持たず1人で使用者がいないこと(自分1人の体1つで役務提供を行う仕事であること)

 

③仕事の出来高によらず、ほぼ固定額の支払いであること

 

④賞与の支払いがあること(年末年始の餅代等も含む)

 

⑤社宅、寮等があること

 

⑥慰安旅行で自己負担分が少ないこと

 

⑦あらかじめその人の働く場所、曜日時間が定められていて、原則交替ができないこと

 

⑧指揮命令が支払いをする会社にあり、支払いを受ける人が自由に仕事の手順を決める等の余地がないこと―です。

重加算税を課せられないための「自首」とは?

【対策】

①請負契約の契約書を作成すること

 

②できるだけ出来高払いとすること

 

③請求書・領収書を発行し、具体的な仕事名を記載し、消費税別とすること(消費税込でもよいが、別のほうがさらによい)

 

④2人1組とし、親方1人に支払い、もう1人は親方から給料をもらうこと

 

⑤会社を設立し、その人たちを雇用し、派遣的な役目を持たせること。ただし、売上が年間1000万円を超えると消費税が原則2期後から課税となり、基準期間の課税売上高(原則、前々年)が5000万を超えると簡易課税の選択ができなくなるが、相当な節税となる

 

⑥支払いを受ける人は、毎年きちんと確定申告を行うこと

 

当然、売上は支払いを受ける額に一致している必要があります。税務調査官は、たとえ管轄税務署が違っていても、支払いを受けた外注先の申告内容を調べることがよくあります。

 

経費については、個人個人の使い方や認識で異なることは当然ですので、管轄税務署で調査にならなければ問題とされません。しかし、売上は、その年の支払額と支払いを受けた金額が一致していなければ、どちらが本当なのかということで問題となります。

 

今回の調査では、支払いを受けた側が売上をまったく申告していなかったり、少なめに申告していたりと問題がありました。そうすると、税務調査官は管轄外の税務署に「調査資料情報」を送ります。情報をもらった側は、各人を呼び出しにかかるでしょう。この場合、完全に証拠を握られていることから〝悪質〞とみなされて重加算税が課せられ、7年間遡ることになると考えられます。

 

この場合の対策は、まず「自首」することです。自分の方から「期限後申告」「修正申告」をするのです。この場合の期間は、所得税の更正決定の期間制限である3年分です

 

必要経費は、自分でかかった分を申告するのですが、〝給与所得控除分〞くらいはつけていいと思います。領収書等を集めていない場合が多いのですが、自己申告ということなので、よく思い出して合計するのです。

 

自主的に申告してしまえば加算税は賦課されず、しかも3年で経費も認められると考えます。

 

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鳥山 昌則

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著者は「闘う税理士」として知られています。闘う相手は誰か? もちろん、税務署です。 闘うといっても、税務署を相手に子どもじみたケンカをする訳ではありません。事実認定をしっかり主張し、税務署に認めてもらうための交渉…

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