ネット証券での満足度向上、低コストとサービス品質の向上が背景に
ネット証券の満足度をファクター別に見ると、「手数料・金利」で+20pt以上、「商品・サービス」、「口座情報」、「顧客対応(オンライン・コールセンター)」で+10pt以上の向上となった。
多くのネット証券が手数料無料化やポイント還元などを推進し、低コストで魅力的な商品・サービスを提供する戦略が評価されたことが背景にあると考えられる。特に市場が不安定な時期においては、運用コストの低さは顧客の収益に直結することからも、その重要性は今まで以上に認識されるきっかけとなったと考えられる。
ファクターの内訳をさらに詳しく見ると、口座情報では「口座で提供されている情報」を筆頭に、オンライン(顧客対応)では「見たい情報の探しやすさ」や「掲載内容のわかりやすさ」などの項目で向上が見られた。また、コールセンター(顧客対応)では、昨年は新NISAスタートによる問い合わせ数の増加により「電話の繋がりやすさ」の評価が低下したが、本年調査では大幅に改善した。これらの実績がネット証券の総合満足度向上に寄与している。
市場の変動が激しい時期において、特にネット証券が示した満足度の向上は、デジタル化されたサービス提供の高度化と、顧客のニーズに合致した価値提供の重要性を改めて浮き彫りにしていると言える。
株価急落時の金融機関のフォローの重要性、「役に立つ」情報提供が満足度向上の鍵
2024年8月に起きた東京株式市場の株価大幅下落の際、金融機関からの市場状況や今後の見通しについての連絡や案内の有無を「営業担当者からの連絡(訪問、電話)」、「コールセンターからの電話」、「Eメール」、「その他インターネット経由の通知」の4チャネルで確認したところ、連絡があった場合となかった場合では満足度に大きな差異があることが確認された。これは市場の混乱期における金融機関からの顧客への寄り添い、情報提供を行うことの重要性を示していると言える。
提供される情報そのものの質についても注意が必要である。提供される情報が「ある程度役に立った」と「役に立った」場合では、満足度に大きな開きが見られ、Eメールやインターネットといったオンライン経由の連絡の場合で80pt以上、営業担当者やコールセンターといった人を介した連絡の場合では140pt以上の差が確認された。
市場の混乱期における金融機関からの情報提供は不可欠であるが、顧客から「役に立つ」と感じられることが満足度向上の観点においては重要であることがわかる。顧客が必要としている情報を見極め、それを効果的なチャネルを通じて提供することで、顧客の不安を軽減し、ひいては金融機関に対する信頼と満足度を高めることに結びつくものと考えられる。金融機関が顧客とのエンゲージメントを深めるためには、重要な取り組みと言える。

![[出典]:J.D. パワー2025 年個人資産運用顧客満足度調査SM](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/b/9/800/img_b93d41b581431e6f3b161dd2bd5bb33f77506.jpg)