導入が進む「チャットボット」高年層の満足度に課題【2025年カスタマーサポート最新調査】

「J.D. パワー 2025年カスタマーセンターサポート満足度調査<金融業界編><EC・通販業界編>」より

導入が進む「チャットボット」高年層の満足度に課題【2025年カスタマーサポート最新調査】
(※写真はイメージです/PIXTA)

米国を本拠とする国際的なマーケティングリサーチカンパニー、J.D. パワー(ジェイ・ディー・パワー)より、2025年カスタマーセンターサポート満足度調査<金融業界編><EC・通販業界編>の結果が発表されました。両業界ともにチャットボットの導入が進み、若年層の利用率は2割近く見られつつも、高年層では依然としてコールセンターが求めらるなど、課題が残る状況が明らかになりました。ランキングの結果と共に詳細を見ていきましょう。

2025年カスタマーセンターサポート満足度調査

CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関である株式会社J.D. パワージャパン(本社:東京都港区、CEO:木本卓、略称:J.D. パワー)は、2025年カスタマーセンターサポート満足度調査<金融業界編><EC・通販業界編>の結果を発表した。

 

本調査は金融業界(対象8業態)およびEC・通販業界(対象2業態)におけるカスタマーセンターサポート利用時の満足度を聴取したものである。

チャットボットの導入進む、若年層の利用率は2割近くに

カスタマーセンターサポートにおいてチャットサポートが浸透しつつあるが、特に自動応答によるチャットサポート(AIチャット含む、以下「チャットボット」)の導入が各社で進んでいる。

 

本調査でも、直近の問い合わせ窓口としてチャットボットを利用した割合は、金融業界で11%、EC・通販業界で13%と、それぞれ1割を超えた。特に若年層(20-30代)では、チャットボットの利用率が2割近くに達し、他の年代を大きく上回った。

 

加えて、同じ用件で一度でもチャットボットを利用した割合は金融業界、EC・通販業界共に全体で約3割となり、チャットボットがカスタマーセンターのチャネルとして存在感を高めていることがうかがえる。

 

一方で、高年層(60-70代)では依然としてコールセンターが主要チャネルとして定着しており、特に金融業界においては直近で利用したチャネルのうち7割以上を占めた。

 

出典:J.D. パワー 2025年カスタマーサポート満足度調査SM
[図表1]直近で利用したサポート窓口・機能 出典:J.D. パワー 2025年カスタマーサポート満足度調査SM

金融業界でのチャットボット、高年層の満足度の低さが顕著

金融業界におけるチャットボットの満足度は、コールセンターや有人チャットに比べて低く、とりわけ高年層で顕著に低くなっていることが明らかになった。

 

総合満足度を構成する全4ファクターのうち、「用件に対し提供された情報や回答内容の適切さ」や「問題の解決や対応に要した時間」に対する評価が高年層で低く、チャットボット利用時の経験として「提示された回答の情報量が不十分」や「自分が次に何をするべきかの説明が不明確」と感じた割合が若年層に比べ約10ポイント高かった。

 

高年層ではチャットボットを利用しても十分な回答が得られず、時間もかかるため、低い満足度にとどまる傾向があることがうかがえる。

 

出典:J.D. パワー 2025年カスタマーサポート満足度調査SM
[図表2]チャンネル別総合満足度(金融業界) 出典:J.D. パワー 2025年カスタマーサポート満足度調査SM

今後優先的に利用したいチャネル、高年層ではチャットボットがコールセンターを下回る結果に

本調査では、今後の問い合わせ時に最も優先的に利用したいチャネルについても尋ねているが、金融業界の結果を見ると、全体的には「直近で利用したチャネル」と同じチャネルが選ばれる傾向が見られた。しかし、チャットボットを利用した高年層で見ると、今後も最優先で利用したいチャネルとしてチャットボットを選ぶ割合が全体よりも低く(チャットボット利用者全体:34%、高年層:23%)、逆にコールセンターを選ぶ割合が全体よりも高く(チャットボット利用者全体:17%、高年層:30%)チャットボットを上回る結果となった。

 

今後も各企業は生成AIの進歩を背景に、自己解決型チャネルへのシフトを進めると予測される。チャットボットは若年層を中心に浸透し、カスタマーセンター戦略に欠かせない存在となっている。しかし高年層では依然としてコールセンター利用が主流であり、チャットボットを利用した一部の高年層は次回利用を敬遠してしまう様子がうかがえた。

 

いつでも手軽に利用できることがチャットボットの利点であるが、高年層は明確で丁寧な説明も重視すると考えられる。そのため、満足度向上のためには、利用者の理解度に応じたサポート強度の調整、回答の正確性やナビゲーションの改善といった機能向上に加え、チャットボットでの解決が難しい場合におけるコールセンターや有人チャットへのシームレスな切り替え機能の強化といった取り組みが期待される。

 

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