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トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か――税制が映し出すアメリカの真実
奥村眞吾(著)+ゴールドオンライン(編集)
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アメリカの課税攻勢を受けた日本の自動車産業
2025年7月現在、アメリカの高関税により、日本の自動車産業は苦境に立たされています。これは、1977年から1982年の間に、トヨタ・日産・ホンダといった日本の大手自動車メーカーに対して、アメリカで移転価格税制に基づく税務調査が実施され、多額の追徴課税が行われたことを想起させます。
この事態を受けて日本も対抗措置として、1986年に移転価格税制を導入しました。当初は外資系企業を狙い撃ちするものでしたが、現在では内国法人にも調査の対象が拡大されています。さらに1987年には、日本で事前確認制度(APA)が導入され、アメリカも1991年に同様の制度を導入しました。
このように、当初は相互に課税攻勢をかけ合う対立状態でしたが、やがて沈静化していきました。
「報復税」見送りの第1ラウンド
ここでいう米欧税制対立とは、アメリカの大手IT企業が多くの収益を上げている欧州諸国において、適切な税を納めていないという問題です。この問題に対し、OECDは「包摂的枠組」という多国間の会議体を通じて、デジタル課税に関する国際的なコンセンサスを形成しました。バイデン政権下のアメリカは、これに明確な反対を示しませんでした。
OECDの提案には2本柱がありました。第1は、各国が導入していたデジタルサービス税(DST)を廃止し、その代わりに大手IT企業が多国間条約(MLC)に基づき、一定の所得に対して税を納めるという仕組み。第2は、最低税率15%の国際的課税ルールです。
しかし、2025年にトランプ政権が復活したことにより、アメリカはOECD案を受け入れない姿勢を示しました。2025年7月に成立した「トランプ減税法案」には、OECD案に従わない国に対する「報復税」が規定されていました。しかし、同年6月26日、G7などとの合意により、OECD案がアメリカ企業に適用されないことが決まったため、この「報復税」の条項は削除されました。
とはいえ、「報復税」の削除は一時的な対応にすぎず、米欧間の税制を巡る根本的な対立が解消されたわけではありません。さらに、OECDの「包摂的枠組」に参加しても意見が反映されないアフリカ諸国アフリカ諸国はこの合意に不満を抱き、国連主導で新たな国際課税の枠組みを検討し始めています。
要するに、自国で得た収益に見合った税収を確保したい欧州・アフリカ諸国と、国外での課税を最小限に抑えたいアメリカ企業との対立構図は、かつての移転価格税制を巡る国家間の対立と本質的に変わらないのです。
EU新税の第2ラウンド
2025年7月11日付のフィナンシャル・タイムズ紙は、EU欧州委員会が純売上高5,000万ユーロを超える企業に対する新たな課税制度を提案したと報じました。
この新税は、EU共通予算の財源として位置づけられていますが、実施にはEU加盟全27ヵ国の承認が必要です。対象となるのは、本社の所在地に関係なく、EU域内で事業を展開するすべての大企業です。
この新税には、次の2つの大きな課題があります。
1、すべてのEU加盟国がこの税制に賛成するかどうか
2、もし新税がEUで成立した場合、アメリカがどのような対抗措置を講じるかどうか
DSTを導入した個別国家がアメリカと対立するには限界があると判断したのか、今回はEU全体としてアメリカに対抗する姿勢がうかがえます。今後の動向を注視する必要がありそうです。
矢内一好
国際課税研究所首席研究員
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