(※写真はイメージです/PIXTA)

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連邦所得税廃止で「米国経済」はどう変わる?3つの予測

3. 【米連邦準備制度理事会(FRB)の貨幣印刷によるインフレ税の阻止】

政府支出は税収がその根拠です。言い換えれば、税がなければ政府支出を実行しようとはなりません。「国債を発行すればよい」と言っても、国債の償還に関する信用を担保するための徴税権を具体化した税制が必要です。

 

他方で、税制と税の導入は政府支出への道を開くものの、政治家は増税を嫌い、歳出を好むため、財政赤字が避けられません。すなわち、歳出は拡大するものの、増税は容易ではなく、政府債務は膨らみます。

 

膨らむ債務は中央銀行による貨幣印刷を通じたインフレで返済され、国民が負担を受けます(→現在の日本もそうです)。結果として、『as good as gold』(=ゴールドと同様に価値が安定的なもの)であるはずのドルの購買力は下がります。一部のリバタリアンは、そもそも税がなければ政府支出もなく、インフレは生じないと考えています。

 

さらには、中央銀行がなければインフレは起きないと考える人もいます。→【例】トランプ政権は金融規制の緩和を推進しており、特にステーブルコインの導入を急いでいます。ステーブルコインの導入は、中央銀行や市中銀行による貨幣の発行を抑制する狙いがあると考えられます(→ステーブルコインについては本欄で今後、書く予定です)。

 

4. 【景気刺激(=基礎需要の押し上げ)】「誰かの支出は誰かの所得である」

所得税の廃止は経済の規模を底上げすると考えられます(→米国がこれ以上、需要を押し上げるべきかどうかは別の話です)。

 

ちなみに、前節でも述べたとおり、トランプ氏は連邦所得税の廃止による需要拡大で「米国は『黄金時代』に回帰できる」と述べています。→【例】先日、トランプ大統領が署名した大規模な税制・歳出法案(『ひとつの大きく美しい法案』)による所得税減税の延長やその他の新たな減税措置は減税路線の一歩です。

 

5. 【トランプ氏自身を含む富裕層への恩恵拡大】

2022年時点では、連邦所得税の4割を所得上位1%が、また6割を上位5%が支払っているとされます。連邦所得税の廃止はトランプ氏を含む富裕層が大きな恩恵を得られます。

 

ちなみに、米国で連邦所得税とFRBが創設されたのは同じ1913年です。これについては、リバタリアンの騎手であるロン・ポール元下院議員がよく言及しています。

引き続き「わからない金融市場」

形式的に話を金融市場に戻しますと、たしかに今後の株価しだいで再び『TACO』となり、関税が延長されたり、引き下げられたりするかもしれません。

 

しかし、マーケットは幸か不幸か、この相互関税という材料に飽きていて/慣れていて、また、欧米で飛ぶ『3本の矢』(①金融緩和の実施・期待、②欧州での国防・インフラ支出と米国の税制・歳出法案の成立、③欧州のドラギ・レポートや米国の金融規制緩和などの成長戦略)もありますから、リスクテイクが続く可能性も考えられます。

 

将来のことは一切わかりませんので、引き続き、時間と資産の分散が望まれます。

 

<<レポート全文はコチラ>>

 

 

重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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