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一般の方に理解されづらい価格設定のカラクリ
米農家として活動するなかで、消費者の方々になかなか理解されないこともあります。
例えばお米の価格。近所の農家さんから直接お米を買う方は、スーパーで買うより農家さんから買った方が安いのが当然と思っていらっしゃるのではないかと思います。例えば、スーパーだと5キロで3000〜3500円くらいの品種のものが、農家さんから直接購入すると2000〜2500円くらいで買える。そうすると3000円のお米は高いという価値基準になってしまいます。
でも、例えば5キロ4000円のお米は、茶碗1杯(180グラム)だと70円程度なので、高いと言っても相当安いと思います。調理の手間はかかりますが、パン1個、あるいはコンビニのおにぎり1個と比べても、かなり安いのではないでしょうか。
生活の観点では、物価の高騰が続いている現代では価格が重要な要素で、より安いものを求めるのは自然な流れでもあるかと思います。しかしながら、日本の農業を守るという観点からいうと、安いだけがすべてではありません。農家の方々の採算が取れることも、ものすごく重要だと思っています。
2024年、僕は採算が取れる金額で販売することを重視したのですが、その考えでいくと、スーパーの価格帯よりも少し高くなってしまうことをSNSで発信しました。それに対して、「個人で販売するのに、スーパーの価格より高くなる意味がわからない」というコメントをたくさんいただきました。
農家から買うなら安いというイメージがつきすぎていますが、これにはしっかりと理由があります。個人の農家さんが近所の方に売る分には、販売の手間がかかりません。農協や卸業者よりも高く買ってくれさえすれば、ビジネスとして問題はありません。少なからずプラスにはなるのです。
一方で、独自の販路を持っている農家さんは、販売に相当な時間と労力を使っています。僕であればSNSもそうですし、パッケージをつくったり、通販サイトを開設したり、そのためにいろいろな交渉をしたり、本当にさまざまな工程があります。そこに時間をかけた分、付加価値だと理解してくださっている方もいらっしゃいますが、そこが考慮されにくいのです。
販売に労力をかけるということは、諸経費や人件費がかかっています。農協や卸業者であれば、大ロットでかなり多くの数を一度にさばくので、その分、ひとつあたりにかかる経費はかなり下がります。
一方、個人農家ができるのは小ロット。オリジナルのパッケージをつくって売るようなパターンの販売に関しては、どうしても価格は高くなります。そのあたりの理解がない状態で「安くて当然」と思われているのは、伝え切れていないからで、自分の力不足を痛感するところです。
お米を販売するためには、生産・加工(精米〜製品化:パッケージ化)・販売の3ステップがあり、通常はそれぞれのステップを異なるところで行っています。それを農家が、生産から精米、さらには販売まで一手に担うと考えたら、生産だけやっている農家から近所のよしみで安く購入できるのとは別だということを理解していただけたらと思います。
