(※写真はイメージです/PIXTA)

リゾート地として人気のハワイでは、一戸建てなどの住居施設を観光客向けに短期で貸し出す「バケーションレンタル」が重要な役割を果たしています。しかし、近年では違法な短期賃貸物件が急増しており、厳格な規制も効果的に機能しているとはいえません。本稿では、株式会社Crossover Internationalの栗原なな氏が、地域社会に影響を及ぼす違法なバケーションレンタルについて詳しく解説します。

違法バケーションレンタルがもたらす問題

この罰金徴収率の低さは、今年春頃に地元テレビ局によって報道されたことをきっかけに、ハワイ在住者の間でも注目を集めています。違法なバケーションレンタルは、単に建物や管理会社にとっての問題ではなく、観光業や住宅市場、そして地域社会全体に深刻な影響を及ぼしているのです。

 

まず考えられるのが、ホテル業界への直接的な圧力です。Airbnbなどを通じて運営される違法な短期レンタル物件は、正規のホテルや合法的な民泊よりも価格競争で有利になることが多くなります。

 

その背景には、繁華街から少し離れたエリアで、本来民泊営業が禁止されている場所であっても違法に運営されていることや、合法的に運営されている民泊は、管理費、清掃費用などさまざまな運営コストをきちんと負担しているという事情があります。

 

さらに観光客の多くは、その物件が合法かどうかを知らないまま予約・宿泊してしまうため、本来であればホテルや合法な民泊に流れるべき宿泊需要が違法物件に奪われてしまっているのが現状です。

 

このまま違法レンタルが野放しになれば、宿泊需要を失ったホテルや合法運営者は収益が圧迫され、サービスの質の低下や雇用の削減など、観光インフラ全体の弱体化を招く可能性があります。過半数以上の物件が許可なしに運営されているホノルル市では近い将来現実的に起こり得る問題です。

 

また、違法なバケーションレンタルが地域社会に与える影響も無視できません。住宅地における短期滞在者の頻繁な出入りは、騒音トラブルやゴミ出しの問題、セキュリティ不安の原因となり、地域住民の生活環境を大きく損なっています。

 

さらに、短期レンタル物件は投資目的で保有されることが多いため、住居としての役割ではなく収益物件としての性質が強まり、住宅価格の高騰や賃貸物件の不足に拍車をかけていると指摘されています。

 

ホテルが密集するワイキキ周辺では、もともと特定の条件下での短期レンタルが合法とされており、ローカル住民がほとんど住んでいません。一方、内陸部の住宅エリアでは、住民用の物件が違法に観光用途へ転用されており、投資家が買い占めている結果として家賃の上昇や住宅不足が深刻化しているのです。

 

また、収益を目的とする投資家が物件を買い漁り違法レンタルを行うことで、市は住民向け低価格住宅の開発を優先せざるを得なくなり、結果的に投資家自身が購入できる物件が制限されるなど、投資環境にも長期的には悪影響が広がっていきます。

 

実際、ホノルル市ではここ数年、短期レンタルに関する法改正案「Bill 41」についての議論が続いています。これは、これまで最低宿泊日数30日で運用が許可されていたエリアに対し、今後は90日以上に延長する内容を含んだ法案で、可決された場合には、短期レンタルビジネスに一定の終止符を打つような大きな影響を与えることになります。

 

こうした規制強化の背景には、違法運営者の存在によって地域社会や市の財政、観光産業全体が深刻なダメージを受けているという現実があります。つまり、違法レンタル運営者によって、法令を守り健全に運営している多数の事業者や投資家までもが不利益を被る可能性があります。

 

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