「法的拘束力のない家訓」がファミリービジネスやファミリーガバナンスの生命線となるワケ【弁護士が解説】

「法的拘束力のない家訓」がファミリービジネスやファミリーガバナンスの生命線となるワケ【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

かつては敏腕な「番頭」が、その属人的な手腕でファミリービジネスやファミリーガバナンスを支えていました。しかし、その番頭が去った後、会社・ファミリーはどうなるのでしょうか。本稿では、持続可能な企業になるためのファミリーガバナンスの具体的な手法について解説します。

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消えゆく“番頭さん”

番頭(ばんとう)とは、「江戸時代の商家の使用人のうちで、最高の業務支配人」「家政全般を取り仕切る最高責任者」というイメージがあります。明治期の古い商家や財閥等を描いたドキュメンタリや映画を観ていても、ファミリーおよびファミリービジネスの委細を把握する番頭が登場し独特の存在感を放っていたりします。ファミリーのメンバーではないものの、番頭は、ファミリーの資産管理、メンバー間のあつれきや紛争調整、ファミリービジネスの事業承継の管理等を担当し、ファミリーの問題全般を属人的に解決していたといえます。

 

現在でも、番頭に相当する役割を担う方は、特にファミリービジネスで中小企業を営んでいるファミリーには見受けられます。一方、ファミリーのメンバー数が増えたり、ビジネスの規模が大きくなってくると、番頭が複数いたとしても番頭のみで対応するのはファミリーガバナンスの観点から難しいといえます。番頭は属人的なため、番頭の役割を担う方が病気になったり、ファミリービジネスを行う会社から定年退職したりすると、継続的にファミリーを支えていくことは不可能です。

 

また、番頭は、ファミリービジネス企業の従業員になっていることが多いものと考えられますが、企業の従業員でありながら、株主であるファミリーのプライベートに関するサービスを行うことは、コーポレートガバナンスやコンプライアンスの観点からは問題があるといえます。実際、ファミリービジネスを営んでいるかにかかわらず、番頭の高齢化問題に直面して頭を痛めている依頼者も多くいらっしゃいます。このように、ファミリーガバナンスを番頭という属人的な方法に頼るのも、限界に来ているように思われます。

ファミリーの統一した価値観の醸成(ファミリー憲章・家訓等)

番頭という属人的な解決方法を離れる場合、ファミリーガバナンスは、仕組みとして対応する必要が生じます。この点、ファミリーガバナンスの仕組みとしてまず大切なのは、ファミリーにとって大切な統一的な価値観を確認することといわれています。

 

このような価値観はあくまでも精神条項であり、単体では法的拘束力を有しません。ただ、ファミリーガバナンスの仕組みとなる後述の株主間契約や信託契約をめぐる解釈規範やメンバーの行動規範として機能します。

 

この価値観は、家訓、ファミリー憲章、家憲といった形で具現化することが一般的ですが、日本でも、古くは、三井家の宋竺遺書(そうちくいしょ)や、三井家訓、三菱グループの岩崎家訓が有名です。

 

法的拘束力を有しないとはいえ、問題行動の抑止力として機能したり、ファミリー全体が尊重する価値に則した行動の推進力となったりするなど、ファミリーガバナンスにおいて最重要の概念ともなります。

 

ファミリーガバナンス契約

ファミリー憲章等で、ファミリーにおける統一的な価値観を確認することで、かなりのファミリーガバナンス力を発揮することができます。従って、ファミリービジネスを営んでいないファミリーにおいては、ファミリー憲章を定めたあとは、ファミリー会議体やファミリーオフィスを活用することで、ファミリーガバナンスを効かせていくという選択肢もあろうかと思います。

 

一方、ファミリービジネスを営んでいるファミリーにおいては、ファミリービジネス企業の持分権をめぐる利害関係が対立することにより、ファミリー内での紛争からファミリービジネスの経済的・社会的価値の毀損を生じる紛争に発展する可能性もあることから、ファミリーガバナンス契約等の法的仕組みを活用して、ファミリーガバナンスの実行化を図ることとなります。

ファミリーガバナンス契約としての株主間契約と信託契約

ファミリーガバナンス契約としては、株主間契約または信託契約を用いることが多いといえます。

 

株主間契約は、株主全員を当事者として、株式の議決権の行使方法や、譲渡に関するルールを定めて、株式がファミリー以外に分散することを予防する仕組みが一般的です。株主間契約は、後述の信託契約と異なり、株式の所有権が移転することはありません。仕組みとしては簡潔で、管理コストは節約できます。

 

一方、株主間の契約にすぎないため、株主間の議決権行使の制約を法的に拘束することには限界があるといえます。また、株主に相続が発生した場合、株式の分散を予防するには完全ではありません。

 

これに対し、信託契約は、株主でありファミリーメンバーである委託者が、受託者に株式を移転し信託財産とすることで、自らは受益者として経済的な利益を享受する仕組みです。この信託には、たとえば元株主に相続が発生したとしても、相続時には株式の所有権は受託者にあるので、相続による株式の分散が予防できる点がメリットといえます。

 

また、信託契約において議決権行使に関する指図権者を定めることが一般的ですが、指図権者を定めることで、議決権行使の統一的行使が確保できることとなる点も経営の安定が図られる点でメリットといえます。一方、指図権者の指図による受託者による議決権行使という仕組みが必要となり、株主間契約より契約の作りこみを要し、管理コストがかかる点がデメリットです。

 

ファミリービジネスを経営しているファミリーごとに抱えている問題点はさまざまです。また、資産規模も異なります。そこで、ファミリー内の問題点・利害関係を適切に調整し、継続的なファミリービジネスを可能にする適切な仕組みとしてのカスタムメイドのファミリーガバナンス作りが求められているといえます。

 

酒井 ひとみ
シティユーワ法律事務所

 

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