10年間で貯蓄7,000万円が1,800万円に
山岡幸一さん(75歳・仮名)が年金生活に入って10年。最近、通帳残高を眺めては不安になる時間が増えたといいます。
いくつかの銀行に分散した預金は約1,800万円。世間一般で見れば、決して少ない金額ではないでしょう。
J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、70歳代・二人以上世帯の貯蓄平均額は2,416万円。高額資産を持つ世帯の影響を除外した中央値は1,178万円です。
こう見ると、山岡さんの資産は、不安に駆られるほど少ないとはいえません。しかし、山岡さんは焦りの表情を見せます。
「いや、全然余裕はないです。ほんの10年前までは、使い切れないぐらいあると思っていたのに……」
実は、65歳で定年退職した当時、山岡さんには7,000万円を超える金融資産がありました(退職金や相続分含む)。部長職まで務め上げた山岡さんの年収は最高で1,300万円を超え、老後資金にはかなり余裕があると考えていました。
しかも、住宅ローンは完済済み。「もうお金の心配はいらない。40年も働いたんだから、老後はやりたいことをやろう」と思っていたといいます。
ビジネスクラスで旅行「潤沢な老後資金があるので」
実際、定年直後の数年間は、まさに夢を叶えた時間でした。
夫婦でヨーロッパやハワイ、国内の高級旅館などを巡る日々。海外へは長時間移動が楽なビジネスクラスを選ぶこともあり、「せっかくだから」と有名ホテルを予約。1回の旅行で当時100万円以上かかることも決して珍しくありませんでした。
とはいえ、山岡さんにはめちゃくちゃに散財しているという感覚はありませんでした。潤沢な老後資産のなかで、「ご褒美時間」を送っていただけ――そんな認識だったのです。
日々の生活費も現役時代の感覚のまま。夫婦での外食は1回1万〜2万円ほど、百貨店での買い物も抵抗はなし。元部下や友人との会食では、「ここは自分が払うよ」と自然に口をついて出たといいます。
固定資産税、自動車維持費、保険料なども含めると、毎月の生活費は、夫婦の年金収入月25万円を大幅に上回っていました。
70歳を迎える頃、山岡さんは現実に直面します。
「これは減りすぎだ……」

