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「将来にわたって尽きる心配がないか」が、家計の考え方の基本
資産運用相談と保険相談は、いずれも皆さんの家計に関するお金の相談です。資産運用は「増やす」ためのもので、保険は「備える」ためのものです。これらはお金に関する一部の側面を捉えたものでしかありません。
家計のお金の流れというのは、収入があり、支出があり、手元にある貯蓄があり、それらをトータルで考えていく必要があります。いま現在のお金の流れを考えることも重要ですが、将来にわたってお金が尽きる心配がないかを考えていくことも必要です。
「未来のことなんて…」と思考停止してしまう人も多いのですが、それではいけません。ご自身の未来の家計を考えることはとても大切です。
とはいえ、将来の資金が尽きる年齢(資産寿命)を予測することは、資産運用相談や保険相談以上に考える要素が多く複雑になるので、簡単ではありません。そこで、プロに相談することになりますが、その際、皆さんにぜひとも心に留めておいてほしいことがあります。
「不安の元」はたくさんあるが…
老後生活に不安を抱く人は少なくありません。物価が上昇している、税金や社会保険料負担がいま以上に増えるかもしれない、年金はもらえるのだろうか…など、不安材料は事欠きません。そのような不安が積み重なった結果「老後生活、お金がなくならないだろうか?」と考えてしまうのは仕方がありません。
お金が尽きるのは怖いことです。想像したくもないでしょう。そして、そのような不安を抱いた人は「できる限り使わないようにする」という行動を取ります。
内閣府が発行している経済財政白書には、亡くなるときが金持ちであることがわかるデータがあります。老後生活で資産があまり減っていないということがわかる、驚くべき内容です。多くの統計値はお金持ちが平均値を引っ張り上げているため、筆者もその影響かと最初は思ったのですが、中央値を見ても同じ傾向なのです。つまり、多くの人は老後生活において、できる限り資産を減らさないように努力しているのです。
不安なのは、ズバリ「わからないから」
「不安だからお金を使えない」という気持ちはわかります。それでは、不安の元はどこに行きつくのでしょうか? 金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」が参考になります。
「老後生活は心配ですか?」という問いに対して、「非常に心配である」と「心配である」と答えている人を合わせると約80%です。老後生活に対して多くの人が心配している姿が見えてきます。違和感のない結果です。
そして、老後を心配している世帯に対して「老後生活を心配している理由を教えてください」という質問が続きますが、その答えに注目です。
「十分な金融資産がないから」「年金や保険が十分ではないから」「十分な貯蓄がないから」「退職一時金が十分ではないから」「十分な収入を得られる見込みがないから」という回答が並びます。
アンケートの次の質問は別の話に移ってしまいます。筆者はもう一歩踏み込んで聞いてほしいと思いました。その質問とは「あなたにとって十分な〇〇とはいくらですか」というものです。
このアンケートに答えた人たちは、十分な額がいくらなのかの答えを持っていて、自分の現実との差を見て「十分ではない」と答えているのでしょうか? 筆者はそうではないだろうと考えています。「十分な額はわからない」「なんとなく不安」「いくらあっても不安は残るから十分とは答えられない」これが本音ではないでしょうか。
筆者が50代向けのセミナーをする際に「公的年金をいくらもらえるのかわかりますか?」「退職金をいくらもらえるかわかりますか?」「勤め先の企業年金制度がどのようになっているか知っていますか?」と質問をするのですが、50代の人でも多くの人が「よくわからない」と答えます。これは、金融広報委員会の金融リテラシー調査の「50代の公的年金に関する理解」の結果とも合致します。
退職前の人も、年金生活者も、「よくわからないから不安」という人が圧倒的に多いということだけはいえそうです。「不安なのはわからないから」なのです。
そして、その不安が存在し続けるので、できる限り使わないという行動になり、「死ぬときがお金持ち」という何とも悲しいデータとして現れてくるのです。
「不安を取り除き、健康で元気なうちに、もう少し生きたお金として使ってくれたらいいのに」と思ってしまいます。
小林 篤典
FP事務所 きずな 所長