(写真はイメージです/PIXTA)

インドの物価上昇に急ブレーキがかかりました。6月12日発表の5月の消費者物価指数は、野菜価格の大幅な下落を主因に2.8%まで鈍化し、利下げを後押ししました。金融政策のスタンスを「中立」へ変更するなど、新たな局面を迎えたインド経済の行方についてみていきましょう。ニッセイ基礎研究所の斉藤誠氏が詳しく解説します。

主因は食品価格の下落、特に野菜が大幅安

インド統計・計画実施省が6月12日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、2025年5月のCPI上昇率は前年同月比2.8%と、前月の同3.2%から低下し(図表1)、事前の市場予想(同3.0%)1を下回った。

1 Bloomberg集計の中央値。

 

出所:インド統計・計画実施省
[図表1]消費者物価上昇率 出所:インド統計・計画実施省

 

地域別のCPI上昇率をみると、都市部が前年同月比3.1%(前月:同3.4%)、農村部が同2.6%(前月:同2.9%)と、それぞれ低下した。

 

品目別にみると、主に食品価格の下落がCPIを押し下げた。

 

まず食品は前年同月比1.0%となり、前月の同1.8%から低下した(図表2)。食品のうち、まず野菜が同▲13.7%(前月:同▲11.0%)となり価格下落が続いた。特にインドで日常的に必須な野菜とされるトマトは同▲26.2%、ジャガイモは同▲20.3%、タマネギは同▲10.7%と大きく下落している。また豆類(前年同月比▲8.2%)と香辛料(同▲2.8%)、肉・魚(同▲0.4%)の減少が続いたほか、国際価格の軟化により穀物製品(同4.8%)が鈍化した。

 

出所:インド統計・計画実施省
[図表2]食品価格指数の要因分解 出所:インド統計・計画実施省

 

他方、油脂(前年同月比17.9%)や果物(同12.7%)は二桁増だったほか、牛乳・乳製品(同3.1%)が小幅に上昇した。なお油脂価格の高騰は昨年9月の食用油の関税引き上げや国際的な価格上昇によるものだ。このほか、加工食品(同4.4%)の伸びは横ばいだった。

コアCPIは小幅に上昇、金価格高騰が影響か

燃料・電力は前年同月比2.8%(前月:同2.9%)となり、4ヵ月ぶりに低下した。

 

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比4.2%(前月:同4.1%)と、小幅に上昇した。

 

カテゴリー別にみると、金価格の高騰によりパーソナルケア(同13.5%)が二桁増を続けたほか、輸送・通信(同3.8%)や住宅(同3.2%)が前月から小幅に上昇した。一方、家庭用品・サービス(同2.0%)と娯楽(同2.4%)は前月から低下した。衣服・靴(同2.7%)、教育(同4.1%)は前月から横ばいの伸びだった。

 

5月のインフレ率は主に穀物と豆類を中心とした食品価格の軟化とベース効果により3%を下回り、2019年2月以来の低水準となった。6月は大雨による農作物被害のためタマネギ価格が上昇する可能性がある一方、政府が5月30日に食用油の基本関税を20%から10%に引き下げたため、食品価格は低水準を維持しそうだ。

 

インド気象局(IMD)の予測では、今年の南西モンスーンの降雨量は長期平均(LPA)の106%であり、供給網が適切に機能する限り食品価格は落ち着いた推移が続きそうだ。現在のところ南西モンスーンは早期に到来しており、カリフ作の見通しに好材料と受け止められている。

インフレ鈍化を受け0.5%の大幅利下げ

昨年7月以降はインド経済の減速感が続いて景気下支え策が求められるなか、RBIは6月の金融政策委員会(MPC)では3会合連続の利下げを決定した。0.25%の利下げが広く予想されていたが、RBIは0.5%の前倒しの利下げに踏み切った。一方で、金融政策のスタンスはこれまでの「緩和的」から「中立」に変更し、また今年度のインフレ予測を物価目標(中央値)である+4.0%から3.7%に下方修正した(図表3)。

 

出所:CEIC
[図表3]消費者物価上昇とインフレ目標 出所:CEIC

 

世界情勢は厳しく、不確実性の高い状況が続く中、国内の民間消費と投資を刺激して成長の勢いを加速させるためにも追加利下げの余地はあるとみられるが、南西モンスーンの影響や米印貿易交渉の行方を注視するため、RBIは当面、様子見姿勢となりそうだ。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年6月13日に公開したレポートを転載したものです。

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