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母が長男教だから?
薫さんはふと、ある不信感を抱きました。母は確かに昔の価値観に寄った考えを持っていました。幼いころから、娘である薫さんより辰夫さんのほうに甘い態度ばかりとっていたのを目の当たりにしていたのです。しかし、そうはいってもあれだけ生活を支えていた薫さんのことをこんな形で無下にするとはとても思えません「もしかして……。自分に都合のいい遺言書を母に書かせたのではないか?」。判断能力が衰え始めていた母に、兄が都合のいいように働きかけたのではないかという疑いを持つようになったのです。
「やり口が汚すぎる。絶対に許さないから……」薫さんはとうとう弁護士への相談を決意しました。
母の財産を受け取ることはできるのか?
弁護士からの回答は冷静でした。
「もし遺言書を書いた当時にお母様の判断能力が欠けていたと証明できれば、遺言の無効を主張することはできます。ただ、それを立証するのは極めて難しく、時間も費用もかかるのが現実です」
そこで、現実的な選択肢として「遺留分侵害請求」を提案されました。遺留分とは、たとえ遺言が別の内容を示していても、相続人とされる人に保証される最低限の取り分のことです。薫さんのような「子」であれば、法定相続分の半分、つまり遺産全体の4分の1に相当する額を請求することができます。
遺産は自宅が約1,500万円、預金が約800万円、合計で約2,300万円。遺留分として薫さんが請求できるのは575万円となります。この575万円を現預金の遺産から相続することができれば、建物は兄に、預金の一部は薫さんに、と丸く収めることができるでしょう。
内容証明を送った効果
弁護士が兄に内容証明を送ると、当初は突っぱねていた兄も相続登記を依頼していた司法書士に相談し観念したのか、「じゃあ、預金の全額を渡す」としぶしぶ応じてきました。
結果、本格的なトラブルになる前に解決できたものの、薫さんは兄の辰夫さんと疎遠になったといいます。
