私が全部やっているのに…「母名義の空き店舗」の収入は誰のもの?〈40代女性〉が税理士の答えに絶句したワケ【相続の専門家が解説】

私が全部やっているのに…「母名義の空き店舗」の収入は誰のもの?〈40代女性〉が税理士の答えに絶句したワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「名義は母のまま。でも、実際に動くのは私……」父の遺言により全財産を相続した母。今は空き家になった貸店舗の管理を、娘のエリカさん(40代)が引き継ごうとしましたが、税理士に「収入は名義人のもの」と言われてしまいました。親の不動産で子が賃貸事業をするにはどうすべきか? 相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が解説します。

贈与税は? 相続時精算課税制度が使える

エリカさんの母親が所有する貸店舗は木造3階建てで、築20年。土地50坪の固定資産税評価は150万円、建物の固定資産税評価は400万円です。

 

建物は固定資産税評価を市場価格として、400万円の価値として売買、贈与されますので、親子間であっても400万円で贈与を受けるとすれば否認されることはありません。

 

贈与税の基礎控除は110万円です。それを超える290万円に関して贈与税が課税されます。親からの贈与の場合、課税される額が400万円までの贈与税は税率15%-10万円で33.5万円の贈与税となります。さらに親子であれば相続時精算課税制度が使えます。
 

不動産の贈与登記の費用と取得税がかかる

不動産(建物)の贈与を受ける際には、登記費用と不動産取得税がかかります。建物400万円の登記費用と取得税の概算は下記となります。

① 登記費用(登録免許税)

贈与による所有権移転登記の登録免許税は、 

 固定資産税評価額 × 2%(建物の場合)

  • 固定資産税評価額:400万円
  • 登録免許税:
     400万円 × 2% = 8万円
     

② 司法書士報酬(任意)

司法書士に登記手続きを依頼する場合の報酬は、相場で 5万〜10万円前後です(内容や地域により変動)。自分で登記することもでき、その場合は不要。

 

③ 不動産取得税(贈与の場合)

建物の贈与でも原則として不動産取得税が課税されます。住宅用家屋で一定の要件を満たす場合は減額がありますが、自分で住まない場合は適用されません。

 

ここでは「減額なし」の前提で概算を示します。

  • 不動産取得税は、固定資産税評価額 × 3%(住宅用)または4%(一般)
  • 400万円 × 4% = 16万円
     

費用の合計(概算)

項目

金額(概算)

登録免許税

8万円

司法書士報酬(任意)

5〜10万円程度

不動産取得税

16万円

合計(司法書士込み)

2934万円程度 

まとめ

エリカさんは母親が賃貸事業を継続することは実務的に負担があり、自分が継続しようと考えていますので、建物の贈与を受けることをお勧めしました。登記費用や取得税はかかりますが、そうした手続きをすることで税務署から指摘を受けることなく、自分の収入にすることができます。贈与税の負担もありません。

 

エリカさんは母親と相談して手続きを進めたいと検討されています。

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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